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アーティスト・インタヴュー~Part 17 SONOKOのお話テープ(5ページ目)

一人の日本人女性アーティストが「お話テープ」を3つのお気に入りのレーベルに送って、ベルギーのCrammed Discsからデビューする夢物語。Crammed DiscsからもSoundclashシリーズとして再発!

四方 宏明

執筆者:四方 宏明

テクノポップガイド

——アルバムのヘヴン・サイド1曲目は、オルゴールから始まる語り口調の「バルコニー・シーン」。このタイプの曲は、「お話テープ」が原型にあったのでしょうか?

はい。一番初めに作ったデモテープに既に入っていました。

バルコニー・シーンは、偶然にできた曲です。家の中で使える楽器を探していたら、姉のオルゴールがあったので借りたのです。違うものだったらあの曲はできていませんでした。最初はちょっぴりふざけて、オルゴールに合わせてジュリエットの台詞を言ってみたのです。恋に恋している気分。女の子だったら感覚的・身体的に絶対に理解できる世界。とても美しくて(ある意味でグロテスクな)ナルシスティックな世界です。こういうものを見たり聴いたりした時、人は覗き見をしたような気分にさせられるかもしれません。だから、『デビュタント』を聴いた時、居心地の悪くなってしまう人と、どっぷりとその世界にのめりこんで嵌ってしまう人に分かれるようです。好きなか嫌いのどちらかしかない音楽と人に言われます。

——ヘヴン・サイド3曲目「海からの贈り物」は、アルバム収録のSONOKOさんのオリジナルとしては一番好きな曲です。MARTOという少年と合作された曲らしいですが、MARTOとは一体だれなんでしょう? そして、どのように合作をしたのですか?

MARTOは、当時17歳の大阪出身の少年ギタリストです。ドゥルッティ・コラムやフェルトのローレンスのような自作のギター曲のカセットテープを輸入レコード屋さんで自主販売していました。アーティスト名はラディゲの「肉体の悪魔」に出てくる女の子の名前からとったそうです。ガーデニアエンジェルズのオリジナル曲を作ってもらうために、作曲者を探していた時、彼の作品を聴いて気に入ったので、お願いして何曲か作ってもらったのが最初の出逢いです。

「海からの贈り物」とニジンスキーを歌った「Wedding With God」は、わたしのために作ってもらったというよりは既にできている彼のギター曲の中からわたしが2曲選び、メロディーと歌詞を載せて歌ったものです。「海からの贈り物」はヴァンサンとファミリー・フォッダーというバンドのアリグというミュージシャンがアレンジをしてくれました。とてもPOPな感じに仕上がり、マークが初期のゲンズブールを想わせるといって喜んだ曲です。「Wedding With God」はヴァンサン・ケニスがギターを弾いてくれました。とても気にいっています。原曲はもっとインディーズ独特の、良い意味で内向的で密室的な雰囲気を持った親密な感じのするギター曲でした。

——アルバム後にリリースされたミシェル・ポルナレフの『ノンノン人形』をカヴァーしたシングル『La poupee qui fait non』(1988年)は、アレンジもジャケもアルバムよりもアイドル寄りな印象ですが、これはSONOKOさんの意図的な方向性だったのでしょうか?

Crammedはインディーズですが良い意味でのメジャー指向を持ったレーベルなのです。わたしをひとりの新人歌手として売り出そうとしてくれたのだと思います。ただ、スターとして扱われることに慣れていなかったわたしには、ちょっぴり居心地が悪かった事は確かです。
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