そうですね。その後は、もう惨憺(さんたん)たるもんでしたからね。メロンにつぎ込んで、ヴァージンで契約はしたものの、資金がなくなってしまって、どうにもこうにも。そうすると、金の切れ目が縁の切れ目ということになるんです。そっから、暫くは大変でしたね。
たまたま、「Rolling Stone」の時にEDWINが助けてくれたように、スネークマン・ショー好きだったレコード会社の社長が、手を差し伸べてくれて、テレビやらないかということで、クラブキングというテレビをやったんです。まぁ、スネークマン・ショーのテレビ版をやって欲しかったと思うんですが、自分の頭の中は、クラブカルチャーを生み出す土壌づくりで一杯に成っちゃっているんですね。

それには、「はこ」としてのクラブが必要、メディアが必要という事で、実際のクラブとテレビと、あとは、ニュースペーパー的なものとして「dictionary」(写真は82号)というトライアングルでクラブ・カルチャーというシーンを作っていきたいと考えたんです。シーンが生まれると、そこにはたくさんの才能が集まってくると。
クラブキングの名前は、スペインで買ったトランプのデザインが、あまりにもよかったというので、そのままトランプのクラブとクラブのダブル・ミーニングになっていたんですけど。分かるかなぁ~…(笑)。
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15年ですよね。
――フリー・ペーパーという手法を使われた理由は?
アメリカのカルチャー誌「Rolling Stone」が原点にあるかもしれませんね。「Rolling Stone」も、もともとフリー・ペーパーでベトナム戦争の時代に「何でアジアの知らない人たちを殺しにいかなきゃならないんだ?」という反体制=ロックという表現が結びついて当時新しいジャーリズムが生まれたわけじゃないですか?
「お金で買えないものを作ろうよ! お金で売買しない価値」という、dicを始めた当時はバブル全盛で「金稼いで何ぼ。フリーだって? もうけないで何が楽しんだ?」という風潮の頃でしから、それに対するアンチな姿勢がありましたね。

――「dictionary」に掲載されている広告ですが、いいものだけというか、トーン的に合っているというか、選別されているんですよね。
「Rolling Stone」時代から広告をどう作るかという事は、すごく悩んでやってきたんです。あの頃、自分の役割は、広告を集めることが中心だったから、お金を集めるというのは大変な事なんですね、やっぱり。今でしたら、「dictionary」もある程度知名度がありますけど、あの頃は、「Rolling Stone」が説明しきれない、自分すら自分に説明できないものを人に説明しなきゃいけないという自分自身の認識そのものが幼い時代だったんですよ。
カウンター・カルチャーなんていう言葉を誰も知らない時代でしたから。「Rolling Stone」って言えば、ミック・ジャガーねで終わっちゃうし。そうじゃなくってという所から始めなくてはいけないんですよ(笑)。