ビートルズ亡き70年代に一番よく聴いたのが、ポール・マッカートニーのソロと彼のバンド、ウィングスです。しかし当時、ロック史に残る名盤の誉れ高い『Imagine』(元P-MODEL~Les Long Vacation、現モノグラムの中野テルヲもテクノ・カヴァーしてますね)ジョン・レノン、金字塔と呼ばれた『All Things Must Pass』のジョージ・ハリスンとの比較で、『The Band On The Run』辺りまでは、期待が高いだけポールに対して絶賛と言える評価はなかなかされませんでした。
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テクノ~ニューウェイヴ全盛の1980年にリリースされたポールのソロ2作目である『Paul McCartney II』は、ビートルズ関連作品でも一番テクノポップと言えるでしょう。その前年のクリスマス前にリリースされたシングル『ワンダフル・クリスマスタイム』(B面はレゲエです)では、既に前兆と言えるテクノなアレンジが覗えます。
酷評されたファースト・アルバム『Paul McCartney』に続き、ウィングス活動停止後にポールの元祖一人宅録(リンダも参加してるけど)マニアぶりが発揮された私的名盤。ただ、ビートルズ・ファンにはあまり受けはよくないみたいで、それは多分少数意見でしょう。
このアルバムからは『Coming Up』が一番ヒットしましたが、同じくシングルカットされた『Temporary Secretary』はさらにテクノ度が高いです。アルバム中でも最もテクノポップと言って差し支えないのが、8曲目のYMO的インスト『Frozen Jap』(邦題は侮蔑的意味合いもある「ジャプ」から「ジャパニーズ」に変更する日本人に対するたいそう無駄な配慮がなされている)。
ポールが同年に公演のため来日した際、大麻所持で逮捕・拘留された経験から出来た曲だとの憶測もなされたが、来日以前に作ったとの本人の発言。レコーディング前にYMOをテレビで見て、影響を受けたと解釈できる発言もあり。なお、この大麻所持ネタは、スネークマン・ショーの『はい、菊池です』で使われています。
ポールの流行り好きは、変名アンビエント・ハウス・プロジェクト、The Firemanでも発揮されています。かなり意表をつく相棒と言えるキリング・ジョークのユースの協力により、アルバム『Strawberries Oceans Ships Forest』(1994年)をリリース。
8~9分の結構トランシーかつ微妙にずれた感じのよく似たインストが、9曲収録されています。きっと、ポールの事だから、「僕だって、このくらいできるよ」と言った感じで作ってみたのでしょうかね。