アイリッシュロックにR&B、ラップまで乗せたユニークなサウンド
The Scriptのデビューアルバム『The Script』は、非常に完成度の高いアルバムだ。とても新人バンドのデビュー作とは思えない仕上がりだが、前述のとおり彼らは多彩な音楽の影響を受けていて、プロデューサーとしてのキャリアも積んでいる。それを考えれば納得がいくだろう。
ユニークなサウンドでUKチャート初登場1位を獲得したデビューアルバム『The Script』 |
しかし単なる“偶然の産物”とは片づけられないほど完成度が高いのがすごいところだ。アイリッシュなロックサウンドに加えて、R&Bやラップ、ヒップホップといったダンサブルなテイストも感じられるところがユニークだ。強引に例えて言うなら、U2のようなアイリッシュ・ロックサウンドを、インコグニートやシンプリー・レッドのようなブリティッシュ・ソウルのグルーヴに乗せ、ところどころにラップ・ヴォーカルやヒップホップのテイストをちりばめたようなサウンド。国籍も世代も異なる多種多様な音楽が絶妙にブレンドされて、The Scriptならではの世界を作り上げている。
The Scriptが大ヒットしたのは、歌詞のメッセージが多くの人に受け入れらたからだ、と彼らは自身を分析している。ダニエルは、つねに社会的な弱者の側に立って歌いたいという。その彼が書く歌詞の世界はとてもへヴィだ。だから哀愁あるメロディや、時折聴かせるスティングのような切ないハイトーンは胸にぐっと迫るものがある。しかしサウンドはあくまでグルーヴィでノリがいいから、とても聴きやすい。これもThe Scriptのサウンドの大きな特徴だ。
演奏力も抜群、再来日も決定
8月26日の赤坂BLITZでは、熱くグルーヴィなパフォーマンスでリスナーを圧倒した(photo by Yoshika Horita) |
ライヴでのThe Scriptは予想外に熱かった。ダニエルのヴォーカルはとてもエモーショナルでパワフル。CDで聴くよりずっと熱く伝わってくる。グレンは、CDでのクールなプレイとは打って変わって、はるかにグルーヴィ、まるでインコグニートのリチャード・ベイリーのような弾力のあるファンキーなビートが印象的だった。楽曲のよさも演奏力も兼ね備えたThe Scriptが、デビュー早々に世界的な注目を集めているのも納得できる圧巻のライヴ・パフォーマンスだった。
ライヴ直後には、“今度はもっと多くのリスナーの前で演りたい”と言っていたThe Scriptだが、年内にも再来日してライヴを行なうことがほぼ確実になっているそうだ。これから間違いなく日本でもブレイクする大型新人バンドのThe Scriptだから、とくにアイリッシュ・ロックのファンは見逃せないライヴになることだろう。