11個の穴、窓枠も完全再現
ツェッペリンの紙ジャケ10作の中でとくに注目なのは、『III』と6枚目にあたる『フィジカル・グラフィティ』、それに9枚目の『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』だろう。
11の穴、留め具の取り付け方までUK初回盤を踏襲した『レッド・ツェッペリンIII』 |
さらに『フィジカル・グラフィティ』では、建物のイラストの窓の部分に開けられていた穴を完全に再現。従来の紙ジャケでは一階部分の窓にあった細かい窓枠が省かれていたが、今回はそれも再現されている。大きな窓を区切る細い窓枠なので、慎重に扱わないと破損しそうな気もするが、この紙ジャケシリーズを買うのは、LPと同じようにディスクやジャケットを大事に扱う人たちだろうから、心配はいらないかもしれない。
『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』のジャケットは6パターンあったが、クラフト紙の外袋に入れられていて、開けてみるまでどのジャケットなのかがわからないという仕様だった。今回の紙ジャケシリーズではそのうちの1パターンだけが採用されているが、外袋の紙質や、水をつけると発色する特殊印刷を施した内袋が完全再現となっている。
さらに、これらの10作品をすべてまとめたボックスセット『デフィニティヴ・ボックスセット』もある。これには『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』の全6パターンのジャケットや、1stのロゴがオレンジのパターン(“オレンジ・インク”)のジャケットも含まれている。ちょっと割高にも感じるかもしれないけれど、オリジナル準拠の紙ジャケが一度にすべて入手できるし、『IV』の内袋に描かれていて話題を呼んだ記号、すなわちこのアルバムが“フォー・シンボルズ”と呼ばれるきっかけになったあの4つの記号が描かれたブラックの外箱もカッコいい。迷わず大人買い、というツェッペリンファンも多いことだろう。
ただし、中身の音のほうは、ファンの間でも賛否の分かれる1994年(『CODA』は93年)のリマスター音源となっている。多くのファンに支持されているのは、昨年発売のベスト盤『マザー・シップ』の、ジミー・ペイジ自らがリマスターした音源だから、音にこだわるリスナーにとってはそのあたりは悩ましいところかもしれない。
とはいえ、初回のUK盤にこだわって凝ったジャケットを再現したという点で、今回のツェッペリンの紙ジャケシリーズはとても価値があるといえる。こんな紙ジャケなら大歓迎という人も多いハズ。とくにLPを聴いて育った年代のリスナーならたまらないだろう。パッケージを開封し、ディスクをプレイヤーに入れるときには、以前の感覚が懐かしくよみがえってくるかもしれない。