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チープ・トリックが武道館で名盤を再現(2ページ目)

4月に予定されているチープ・トリックの来日公演は、30年前のあの名盤を再現するコンサートになるという。彼らが世界的スターになるきっかけを作った『at 武道館』とはどんなアルバムだったのか。

執筆者:田澤 仁


ライヴの興奮が伝わってくる『at 武道館』


『at 武道館』は、チープ・トリックを世界的なスターに押し上げただけではなく、日本武道館の名前も世界に広めたと言われている。現在では、世界的なアーティストが来日すると、東京ドームや横浜アリーナといった巨大な会場で公演を行なうのが普通だが、当時はスタジアムなどがコンサートに使われることはほとんどなかった。あのビートルズの来日公演以降、ビッグネームのコンサートといえば日本武道館だったのだ。

1978年の4月にその武道館で収録された『at 武道館』。冒頭から客席の熱狂ぶりがよくわかるこのアルバムからは、当時の日本でチープ・トリックがいかに人気があったかが伝わってくるライヴ盤だ。収録されている10曲はどれもライヴらしい躍動感に満ちていて、チープ・トリックらしい魅力にあふれたアルバムになっている。

1曲目の「Hello There」は、スピーディなビートでたたみかけるように押しまくるナンバーで、いかにもオープニングにふさわしい曲だ。客席もいっきにヒートアップしているのがよくわかる。続いて「Come On, Come On」、「Lookout」と加速したあとは、へヴィな「Big Eyes」。このあたりで完全に会場が一体化しているのが伝わってくるようだ。

コンプリート・コンサート
『at 武道館』のライヴを完全収録した『ザ・コンプリート・コンサート』。全19曲、MCも完全収録されている。
そしてハイライトは、「I Want You To Want Me」と「Surrender」、ヒットソングが連続して登場する中盤だろう。ポップでノリがよく、ちょっとメロウなメロディ、トリッキーなギターという、チープ・トリックならではの世界が凝縮されたようなナンバー。聴いていてもライヴ会場さながらに盛り上がってしまう。後に発売された『ザ・コンプリート・コンサート』を聴くと、実際にはこの2曲は続けて演奏されていないようなのだが、とても自然な流れに聴こえる。そして最後は、学校のチャイムのようなギターのイントロに導かれる「Clock Strikes Ten」(邦題「今夜は帰さない」)で大興奮のうちに幕を閉じるという見事な構成。ライヴの興奮が伝わってくるようだし、ポップでカッコいいチープ・トリックならではのロックンロールを堪能できる作品に仕上がっている。

全体を通して印象的なのは、観客席の異様な盛り上がり方だろう。サビになればどの曲も一緒に歌いまくっているし、ロビンが一言しゃべるだけでも女の子たちは絶叫。まるでアイドルのコンサートのようなのだ。当時どれだけ日本で、それもティーンの女の子たちに人気があったかがよくわかる。それゆえ、自称本格派のロックファンには、当初は少しバカにされるようあところもあったようだ。しかし曲をちゃんと聴けば、単なるアイドルではなく実力派ロッカーであることがわかるから、その後は男性ファンにも受け入れられたし、世界的にも広く人気を獲得したのだ。その原点となったアルバムがこの『at 武道館』なのだ。

その『at 武道館』を再現するという日本公演は、2008年4月24日、日本武道館で行なわれる。彼らにとっても思い入れたっぷりの日本、そして武道館でのコンサート。見逃せないと思う人も多いはずだ。ただし今のところ公演は1日限りとなっているので、チケットの争奪戦は激しくなりそうだ。

さて、チープ・トリックは、武道館で再び伝説を作ることになるのだろうか。


【関連リンク】
チープ・トリック公式サイト(英語)
ソニーミュージックのチープ・トリック情報ページ
H.I.P.のチープ・トリック特集ページ
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