2007年も残り僅か、ということでオーバーグラウンドなJ-POPシーンのトピックをひとつ とりあげておきましょう。

大容量携帯音楽プレーヤーの普及と共にセルフ・アーカイブの時代がやってきて、選曲の妙で勝負するタイプのコンピレーションCDは衰退するいっぽう……かと思いきや、こんな大ヒット作が生まれていました。今回御紹介するのは2007年に最もヒットしたJ-POPコンピレーション・アルバム『R35 Sweet J-Ballads』です。

『R35 Sweet J-Ballads』

R35 Sweet J-Ballads
V.A. 『R35 Sweet J-Ballads』
キャッチコピーは「もう一度、妻を口説こう。」収録曲はこんな感じです
2007年4月25日に発売され大ヒットとなったこのアルバムは、寿命の短いコンピ盤の中では異例のロングラン・セールスを記録しました。

この記事を作成するにあたり改めてCDショップを数店チェックしてみましたが、大型専門店からファッション・ビルのテナント系、街のレコード屋風のお店までほとんどのショップが現在も「このアルバムを軸に」コーナーを展開していて、その影響の大きさがうかがえます。

「R35」という言葉自体もすっかり定着したようですね。このアルバム関していえば、「R35」の「R」には本来のrestricted(制限、限定)という意味のほかに、~90年代初旬の青春時代をもういちど~というreminder的な要素も感じます。

R35世代のハートを掴む、大ヒット曲の選りすぐり

テレビドラマのタイアップが最も効果を発揮していた時代の大ヒット曲の選りすぐりは、まだ「ニューミュージック」の残像を残した楽曲も多くて「歌は世につれ世は歌につれ」という言葉を思い出させます。個人的には全曲がCDショップの販売員だった頃のものなので、曲名を見るだけで店頭の熱気や喧噪を思い出します。

1曲目のCHAGE and ASKAの「SAY YES」はドラマ 『101回目のプロポーズ』 の主題歌。純愛トレンディ・ドラマに多くの人が本気になれた時代を代表する大ヒット曲です。ドラマ最終回の翌日にクライマックス・シーンを店頭放映したら、黒山の人だかりができましたっけ。

「シングルベッド」はシャ乱Q 94年10月発売のシングル。発売当初は全く売れず、徐々にチャート順位をあげていってミリオンに到達した、苦節っぽい楽曲です。この曲(と「ズルい女」)がヒットする少し前に体を壊し入院した私は、退院後初めて出勤した日に店頭に彼らのCDが山ほどあるのを信じられない気持ちで眺めましたが、それが昨日のことのようです。

もうひとつのキャッチコピーは「ふたりのスイートテンCD」

さらに注目しておきたいのが曲の並び順です。出逢いをすっ飛ばして告白からはじまる恋愛の紆余曲折を2セット、そして最後に大団円の中山美穂 & WANDS「世界中の誰よりきっと」が用意されている。そんな全16曲には、カセット・テープのA、B面に選曲と曲順に想いを込めて(あまつさえ、自分で考えたタイトルを付けたりして)贈ったり贈られたりした世代、音楽はソフトを買って聴く世代を虜にするアトモスフィアがあります。

「カメリアダイアモンド」のリッチでゴージャスなCMが目に浮かぶ9曲目は中西圭三の「Woman」。そしてその1曲前に収録されている稲垣潤一の「クリスマスキャロルの頃には」は文字通りクリスマスの楽曲なので、ちょうど結婚10周年を迎えていそうなR35世代カップルが これからの季節に聴く「ふたりのスイートテンCD」としての機能も約束されています。

大抵のコンピレーションには曲数かせぎの水増し的楽曲が入っているものですが、それを許していない点も大ヒットのキモかもしれません。一見そう見えてしまいそうな15曲目「愛が生まれた日」もタイトルの知名度とは裏腹の、聴けば誰もが思い出す定番デュエット曲です。

先の「世界中の誰よりきっと」と共にデュエットを2曲続けて収録している、大きな声で「好きだ!」と言ったあとに もう一度「愛してる」とささやくような、そんな押しの強さがこのコンピレーションのコンセプトをいっそう明確なものにしているのです。


【All About J-POP内関連リンク】
  • CMソング/TV主題歌
    J-POPガイドによるTVドラマ主題歌特集記事やTVCMソング特集記事シリーズや、サーチ・エンジンのリンク集。「10年後のR35」たりえる曲はここから何曲生まれるのでしょう
【関連リンク】