このコンサートはステージ上にエスカレーターが数機設置されていたり、床に電飾が埋め込まれていて光ったりとそのゴージャスさにまずはビックリ。客層も着飾ったお姉さま方や近隣のお嬢様学校の女の子達が大挙してやって来ていて、当時私が自分で行っていたROCKコンサート、ARBやRCサクセションのものとは別世界の華やかでクリスタルな世界が創出されており、軽いカルチャーショックを受けた記憶があります。
8年連続で100万枚越え!ユーミン・セールス絶頂期
松任谷由実 『Delight Slight Light KISS』 当時最先端だったシンセ「Synclavier」が演奏者としてクレジットされた20作目。 |
この年の11月26日に発売されたユーミンのアルバム『Delight Slight Light KISS』は初の売上100万枚を突破。以降、1995年の 『KATHMANDU』 まで8年連続で100万枚越えを記録、私は販売員として彼女のセールス絶頂期を体験することになります。
CDをワゴンに乗せて売りさばく販売方法と、それをさらに煽る各種媒体のプロモーション。何かというと法被を着てきてしまうお祭り騒ぎ体質のメーカー(東芝EMI)によって「開発」された「Yuming FESTA」は、いわゆるアーティスト・デイ※の先駆けとなりました。
※アーティスト・デイ
メガヒット級の新作の発売に合わせてCDショップ店頭で展開される販売促進企画。CDを買うと抽選でグッズがもらえたりするアレの事です。余談ですがユーミンのアルバムの規格盤号はTOCT-6800(『TEARS AND REASONS』)といった「キリ番」があてられている事が多く、東芝EMI内でのプライオリティの高さが伺えます。
そんな訳で私の中では
ユーミンのアルバム発売=もの凄く売れる=もの凄く忙しい
という図式が出来あがっており、荒井由美はともかく松任谷由実はしばらくの間、週末リラックス・モードで聴くような音楽ではありませんでした。
次のページでご紹介するバラード・ベスト・アルバム 『sweet,bitter sweet ~YUMING BALLAD BEST』に収録されている、この「セールス絶頂期」の楽曲が 『THE DANCING SUN』収録の(中でも最も荒井由美的な)「Hello, my friend」と、「春よ、来い」だけだという事実も、いかにこの時代の彼女がアッパーなモードにあったのかを物語っています。
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