去年の記事からあっという間に1年が過ぎて、今年も8月になってしまった。毎年同じに見えるテレビの戦争特番も、ちゃんと見ると隠れていたり隠されていたりした事実が露わになっていたりします。

なにもリアルタイムである必要はないのだ。特に歌は。

J-POPガイドによる反戦歌特集は1970年代から2000年代まで時代を分けて御紹介、2回連続の記事でお届けします。

J-POPガイドによる反戦歌特集イントロ

反戦歌
V.A. 『反戦歌』
1969年に設立、日本の独立レーベルの草分けとなった「URC」の音源から反戦歌を15曲集めた、タイトル通りのコンピレーション
反戦歌と聞かれて真っ先に思い出す曲名は、やはりジローズの「戦争を知らない子供たち」でしょうか。1965年生まれの筆者は、この曲を中学校の合唱コンクールで「歌わされた」記憶があり、それはあまり楽しい思い出とはいえないものです。

また、PUNK~NEW WAVE世代はフォークソングを揶揄する傾向があり、ぬるい「歌謡フォーク」や陰気な「四畳半フォーク」と、しっかり主張をもったプロテストソングとしてのフォークソングとを一緒くたにして聴かず嫌いでいた私は、後年とても後悔することになります。

犠牲者の心の叫びが胸に来る
1970年代編 美輪明宏 「祖国と女達(従軍慰安婦の唄)」

白呪
美輪明宏 『白呪』
オリジナルはエレック・レコードより発売。桑田佳祐や槇原敬之も歌った名曲「ヨイトマケの唄」(コチラコチラで聴けます)も収録されている
歌がBGMにならず、社会の動きに大きな影響を持ちえた時代の「日本のフォーク」については別な機会にとりあげさせていただくとして、ここでは全く違ったアプローチによって心を揺さぶる作品を紹介したい。

それは美輪明宏1975年のアルバム 『白呪(びゃくじゅ)』 。今ではTVタレントとして、アグリーなのかプリティーなのかよくわからないお姿が知られるところですが、『白呪』のブックレットの中にはまるで吉井和哉※のような彼がいます。

※ 吉井和哉
元THE YELLOW MONKEYのヴォーカリスト。美輪明宏との親交も厚く『白呪』のブックレットにはコメントを寄せている。最新作は 『Hummingbird in Forest of Space』


戦争に人生を無いものにされた犠牲者、歴史に負かされた弱者の立場に身を置いて歌われる歌の数々は、1935年生まれで長崎市出身という彼のプロフィールを知ると、その重みがいっそう迫ってきます。

中でも1曲目「祖国と女達(従軍慰安婦の唄)」は、役者として数多くの不幸な女性を演じてきた美輪ならではのもの。その唄からは悲しみを越えた達観すら感じられるのです。

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