職人「トミフラ」のリーダー作の出来栄え
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| Tommy Flanagan Trio『Overseas』 1957年リリース。偉大な脇役、トミー・フラナガンのリーダー作。J.J.ジョンソンクインテットとして訪れていたスウェーデンで、ホーンを外したピアノトリオで録音した本作は、ピアノトリオの名品として知られている。 1. Relaxin' at Camarillo 2. Chelsea Bridge 3. Eclypso 4. Beat's Up 5. Skal Brothers 6. Little Rock 7. Verdandi 8. Delarna 9. Willow Weep for Me 10. Delarna [Take 2] 11. Verdandi [Take 2] 12. Willow Weep for Me [Take 1] |
トミー・フラナガン（Tommy Flanagan, 1930年3月16日 - 2001年11月16日）。
職人。名脇役。トミフラこと、トミー・フラナガンを評する言葉の多くは、自分以外の誰かを引き立たせる脇役としてのもので、彼を主体的に語ったものはそれほど多くはない。野球なら好守の２番打者、サッカーなら堅実なボランチといった雰囲気だが、そんな彼が主役を張ったのが本作だ。
しかし、主役といっても録音の経緯はやはりトミフラらしさが漂っている。J.J.ジョンソンクインテットで訪れたツアー地であるスウェーデンで、ホーンを外してのピアノトリオを録音して制作されたのが本作だ。いかにも「ついで」の感がぬぐえない。
さて、問題の作品だが、あまりジャズを聴きなれていない人にとっては「やっぱりジャズってよくわからないなあ」という印象を与えてしまうかもしれない。複雑なことをやっているわけではないし、変わった曲を取り上げているわけでもないのだが、一回目ではどうしても印象が薄い。地味なのである。
噛めば噛むほど味が出る。贅肉のないピアノトリオ
もちろん、ただただ地味なだけの作品が「名盤」と呼ばれることはない。本作には確たる「聞きどころ」がない代わりに、無駄なもの、余計のものはほとんど聴き取ることができない。とくにトミフラのソロは、ただただ８分音符を埋め尽くすような２流プレイヤーとはちょうど対極にある研ぎ澄まされたプレーだ。あるフレーズが、次のフレーズを引き出す。まさしくソロが「歌」い続けるプレーが、アルバム一枚にわたって展開し続けるのだ。
本作のもう１つの聴き所はドラムのエルヴィン・ジョーンズ。50年代後半から60年代にかけての名作の多くを支えた名ドラマー、エルヴィンはパワフルなプレーで知られているが、本作ではほとんどの場面でブラシを使用している。
といいつつ、最後までおとなしいわけではないのがエルヴィンのエルヴィンたるゆえんなのだが、そこはご愛嬌。トミフラ自身もエルヴィンをして「音楽を豊かにすることができる」と評している。
曲目は「Delarna」、「skal brothers」などのオリジナルを交えつつ、アップテンポなものからバラードまでバラエティに富んでいる。１度でやめず、ぜひ２度３度と、繰り返し聴くことで、その味わいを楽しんでほしいと思う。
次回は本作のドラマー、エルヴィンにちなんだアルバムを紹介してみたいと思う。
【アルバムデータ】
●曲目
1. Relaxin' at Camarillo
2. Chelsea Bridge
3. Eclypso
4. Beat's Up
5. Skal Brothers
6. Little Rock
7. Verdandi
8. Delarna
9. Willow Weep for Me
10. Delarna [Take 2]
11. Verdandi [Take 2]
12. Willow Weep for Me [Take 1]
●パーソネル
トミー・フラナガン（p)、ウィルバー・リトル（b）、エルヴィン・ジョーンズ（ds）
