景色や景観の美しさではない
知床が世界遺産になった理由

2005年7月に世界自然遺産に登録された知床。その語源はアイヌ民族の言葉で「シリエトク」=地の果てを意味するといわれ、細長く鋭角的な半島はオホーツク海と太平洋を分けるように伸びています。

知床を表現するとき、「日本最後の秘境」「手つかずの自然」とよく形容されますが、便利な言葉のベールに隠され、知床の本当の魅力は意外に伝わっていないのでは…と思うことがよくあります。知床が世界自然遺産に選ばれた理由は、景色や景観の美しさというよりも、その複合的な生態系にあります。

「北半球で最も低緯度で流氷を観察することができ、海と陸の生態系の顕著な見本であるとともに、多くの希少種等が生息する重要な地域である」(世界自然遺産・選定理由より)。

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▲2005年にガイド小西が撮影したクマ

知床には1500m級の山々が連なる知床連山がそびえ、半島全体が山でできているような地形をしていて、平地はごくわずか。その向こうはすぐ海。知床の風景の中に立つと、山と海が連鎖しているのがよくわかります。流氷が接岸する世界最南端の地で、流氷がもたらす栄養分が食物連鎖の基礎となり、クジラやヒグマなどの海や陸に暮らすさまざまな生きものを育んでいます。

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▲マッコウクジラ。写真提供/知床ネイチャークルーズ
つい山や森にばかり目が行きがちですが、知床は実は海が面白いんです! 世界自然遺産の登録も陸域だけではなく、海域も指定されているのをご存知ですか? 特に根室海峡(太平洋)に面した羅臼(らうす)町サイドは、多種多様な海の生きもの出会える稀なエリアです。これからの時期(8~9月)、高確率で確認されているのがマッコウクジラ。次のページでは、マッコウクジラをはじめ、知床・羅臼の海の魅力に迫ります。