時が流れるのは早いもので、今週の函館開催からすでに新馬戦が始まっている。これから壮大なスケールで繰り広げられる戦国絵巻、若駒8000頭以上の戦いの火蓋はヒッソりと切って落とされているのだ。そして数々のドラマが生まれ、1年後に勝ち残った優駿の中から、頂点に立つただ1頭のダービー馬が誕生する。競争馬としての最終的な地位と名誉を得るのは、競馬界のピラミッド階層を昇りつめることができた一握りの馬だけなのである。
ある程度の訓練を積み厩舎に預けられた馬たちは、まず横一線のスタートラインで新馬戦に出走する。そして500万→オープン→重賞(2~3歳馬の場合)というステップを踏んで最終的なゴールを目指していく。しかしこれは一部のエリートコースに乗った馬たちであり、途中でつまずき、もがき苦しみ、やる気をなくし、一度も勝てないままにターフを去っていく馬たちも多数存在するのが現実である。
それでは、その最初のステージとなる新馬戦の楽しみについて考えてみよう。新馬戦の楽しみ(その1)は、能力レベルと関係なしに走らされる唯一のレースということだ。一生涯未勝利で終わる馬とダービー馬候補が一緒に走るのだから、見方によっては面白いレースといえるだろう。そこで負けてしまった馬は、同開催中の新馬戦か未勝利戦で敗者復活の権利を与えられる。ただし1着馬から4秒以上離されてしまうとタイムオーバーとなり『しばらくお休みください』というトホホな制裁措置が課せられるが、能力差の大きい新馬戦ではよく見られるケースでもある。
新馬戦の楽しみ(その2)は、競争データなしの純粋予想をしなければならないことだ。予想をする上でのファクター、能力、脚質、気性などがほとんど手探り状態なのである。(これは面白い人とつまらない人に別れるだろうが)逃げると思われた馬が強烈な追い込みを決めたり、注目馬が歓声にパニクって逸走してしまったり、と予想外の展開になることも多い。しかし見る人が見ればパドックでの違いがいちばん歴然とするのは新馬戦らしい。ここはひとつ現場に出向き、自分の目を養うトレーニングの場として活用するのはいかがだろうか。