『象の背中』は男の理想を描く
理想の生き方を感じさせます (C)2007「象の背中」製作委員会 |
苦しみを受け入れ、延命治療は拒否。そして、その日が来るまでは「生きたい」と、自分なりにその方法を見つけていきます。彼の周りの人もみんな理想的ないい人。ドラマチックなことも起こらず、死へと向かう日々は、静かに進んでいきます。
秋元氏は、男の理想的な生と死を描いているような気がします。本当に死が半年後に迫っているとしたら、人は主人公の藤山幸弘のように、諦観と達観を持つことができるのでしょうか? 本当にそうなのかどうかはともかくとして。人とのつながりを確認することが、一番大切なことになるになるのでしょうか? 『象の背中』は、リアルをファンタジーに包みながら、死と生についての理想を描いた作品と言えます。
死を前に、見えてくるものとは?
主人公は、ガンの宣告を受けてもジタバタしません (C)2007「象の背中」製作委員会 |
そして、死を視野に入れて初めて「生」の意味も見えてくるのが分かります。何が大切なのかがはっきりしてくるのです。中世の人が、メメント・モリ(死を忘れるな)と警句を持ち続けたように、死と対比することで、より「生」の実感を得ることができるのです。
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