『墨攻』は望ましい形の合作映画
子役時代から50年のキャリアを重ねたアン・ソンギ |
アン・ソンギ:
今回は3つの国(日本・韓国・中国)が参加し、必要に応じて各国のスタッフが集められたという非常に望ましいお手本のような形だったと思います。日本からは阪本善尚撮影監督が参加し、既存の中国映画には見られない日本的な、または阪本監督的なシーンが撮れたと思います。音楽についてもいかにも典型的な中国の音楽ではなく、東洋らしいアジアらしい曲になりました。
中国にも素晴らしい俳優はたくさんいるのですが、今回私が演じた役については将軍としての威厳もなければいけない、それに加えてヒューマンなところを描かなければいけないということで、そういう意味で私が必要だったかな、と思います。
中国語に苦戦
――劇中では中国語で演技をしています。外国語で演技をすることに抵抗はありませんでしたか?アン・ソンギ:
中国語はとても難しかったですね。これまでたくさんの役をやってきましたが、演じること以外に神経を使ったり大変な思いをしたことはほとんどありません。そういう意味では今回の仕事はとても大きなストレスを感じました。最初は「中国語で演じて、後で中国語でダビングしよう」と、つまり「全部中国語で撮りましょう」と言っていたのですが、中国語のセリフの分量がとても多かったのです。あまりにもセリフが多かったので部下にたくさんのセリフをあてがってだいぶ私の分は減らしたのですが(笑)、でもやっぱり大変でした。
中国語のセリフに対して、それにふさわしい(演技の)表現ができるかどうか。短いセリフは中国語で話し、長いセリフは中国語に似た韓国語の文章を持ってきてそれで演技をしました。中国語に似た口の形の韓国語を使ったのですが、セリフと同じ意味の韓国語ではなく、いくつかの同じ音の単語を合わせました。韓国語としてみるとヘンな韓国語で、それを言うのも中国語のセリフをいうぐらい難しいものでした。しかも将軍の威風堂々とした姿を演じるわけですから普通の中国語よりももっと大変だったわけです。
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