黒澤明監督に憧れた大学時代
撮影現場でもカム・ウソンはイ・ジュンギにとって兄のような存在だった |
コンギル役を演じたイ・ジュンギさんにも現場で指導をしたのですか?
カム・ウソン:
私が出ている場面でなくても、監督とイ・ジュンギが撮影する場面をずっと見ていました。そして気に入らないとダメだしをしましたね。より完璧なものを作ろうと干渉をたくさんしました(笑)。先輩だからといって干渉したのではなく、より良い作品を作るためにやったことです。イ・ジュンギは新人に近い状態だったため、それをカバーするためにアドバイスをしました。彼も私の話をよく聞いてくれましたね。
ガイド:
ソウル大学では美術を勉強していましたよね。東洋画を専攻していたのに、なぜ役者の道に進もうと思ったのですか?
カム・ウソン:
映画が大好きだったんです。絵を描いていないときはいつも映画館にいました。大学の友人の父親がタレントでした。俳優になりたいということを友人が知っていて、父親に話したのです。そしてタレントを養成するスクールを紹介してもらい、そのスクールで放送局の採用試験を受けるように勧められました。
ガイド:
学生の頃はどのような映画に影響を受けましたか?
カム・ウソン:
私だけではなく、私と同世代の人たちにとっては10年前、20年前には日本の映画やドラマが憧れの対象だったのです。当時日本の作品は韓国への輸入が禁止された状態でしたが、どうにか手に入れコピーして皆の間で回して見るのが流行していました。
映画『七人の侍』『愛しているといってくれ』などのドラマを見て、とてもうらやましく思っていました。今では韓国の作品が日本で広く受け入れられていますが、私が日本の作品に感動を受けたように、映画やドラマは国籍を超え交流するのが当たり前だと思っています。
ガイド:
今後は『王の男』の経験を生かしてどのような役を演じてみたいと思っていますか?
カム・ウソン:
『王の男』では、自分自身に対して持っている偏見、イメージを変える良い機会になったと思います。チャンセンはこんな人だと一般的に思われているイメージにとらわれないこと。どのようなキャラクターをつくるのか、というよりも、どのような状況でどのように人が変わっていくのかということに私は関心を持っています。どんな状況の下に生まれ、どのような人生を生きてきたのか。生まれ育った状況によって人がどのように変わっていくのかということに関心を持っているのです。
今後に関しても、「どんな役」を演じたいかということよりも、どんなシチュエーションかということに興味があります。シチュエーションが異なる作品であれば、自分自身も変化していくことができると思うからです。
カム・ウソンも語るように、『王の男』は当初「アイドルも出演せず、ラブストーリーでもない」ということから企画立ち上げの段階で予算が集まらず苦労を重ねたという経緯があります。ところが蓋を開けてみると、記録を塗り替えるほどの大ヒット。当初新人扱いだったイ・ジュンギが大ブレイクしたのは周知の通りです。製作の過程を淡々と語るカム・ウソンの言葉からは作品への愛情と自信を感じることができました。
『王の男』は新宿ガーデンシネマ、恵比寿ガーデンシネマ他 お正月全国拡大ロードショー中。年末年始は、豪華絢爛、そして波乱万丈の韓国の歴史大作に足を運んでみるのはいかがでしょうか。
カム・ウソンプロフィール
韓国で最も知的な俳優と称賛され、どんな役柄も演じてしまう幅のある才能の持ち主。これまでにも“最初に出逢った瞬間から激しい愛を交わす大学講師”“幽霊から部下を守るために苦悩する理性的で温かい心を持つリーダー”や“金のために驚くべき陰謀をたくらむ男”などを演じている。本作では、綱渡りやその他の様々な芸を身につけるために厳しいトレーニングを受け、初の歴史ドラマで宮廷芸人のリーダー役を演じ、大鐘賞主演男優賞を獲得する。【主な映画出演作品】『情愛』(01)、『R-POINT』(04・未)、『スパイダー・フォレスト 懺悔』(04)、『大胆な家族』(05・未)
映画『王の男』公式ホームページ