韓国エンタメ/韓国エンターテインメント関連情報

「美しき野獣」監督が語る撮影秘話(5ページ目)

クォン・サンウとユ・ジテが主演の話題作『美しき野獣』。キム・ソンス監督が単独インタビューで語った撮影秘話をノーカットでお届けします!

執筆者:桑畑 優香

クォン・サンウは彼女がいない!?

作品にはクォン・サンウの純粋で一途な素顔が投影されている
―クォン・サンウさんとは恋愛に関する話もしましたか?
「彼の恋愛観はいまどきの若者らしくありません。いろいろな人と付き合うスタイルではないんです。また、母親に似た女性が理想だといいます。外見ではなく、心が母親に似ていて、母親を大切にしてくれる人が良いと。だから彼女がいないんですよ(笑い)」
―好青年ですね。
「いや、これは宣伝用のコメントとしていっているのではありません。彼はタバコもダメなんです。だから撮影中に一番心配したのがタバコでした。タバコを吸いながら話すシーンでは苦労していました。酒を飲んだり、遊んだりするスタイルでもない。家、または仕事。仕事しか知らないので、彼女がいないんです(笑い)」

ユ・ジテは女性と付き合うのはムリ!?

―ユ・ジテさんとはどんな話をしましたか。
「彼とも同じように個人的な話をたくさんしました。ユ・ジテ、クォンサンウ、そして私の共通点は、皆女手一つで育てられ、決して豊かではない幼少時代を送ったことでした。そんなこともあり3人は兄弟のように仲良くなりました。ユ・ジテさんは、映画しか知らない人です。彼も彼女がいないんです(笑い)。女性と付き合うのはムリだろうと思えるほど、映画しか頭の中にないんです。家に行けばテレビも見ない。映画ばかり見ているんです。生活のすべてが映画で始まり映画で終わる。実は私にも同じようなところがあるんです。そんな彼を劇中のオ・ジヌに重ねました。オ・ジヌはシゴトのことばかり考えていて妻のことも顧みない。映画のことばかり考え早く成功したいと思っていて、他のことは構わなかった。自分の体のキズが腐ってきているのに夢ばかり追っていて、キズを直視するのが怖かったのです」

仕事に夢中になる2人の俳優、そして自分自身をキャラクターに投影しながら、監督はキャラクターを「父親になることができない少年たち」だと定義づけています。
「韓国では父親は『怖く暴力的な存在』というイメージがあります。その父親のイメージは政治家などの権力に重なるものがあります。映画に登場する巨大な犯罪組織を操るボス、ユ・ガンジン役には父親のイメージ、権力のイメージを投影したのです。純粋無垢だった少年が大人になるとき、社会の悪や理不尽さを知る。そこに反発するのか、適応するのか。反発して生きる人ほどキズを負ってしまう、社会の現実を浮き彫りにしたかったのです」

     *   *   *   *   *

監督にお会いして驚いたのは、34歳とは思えない風格。映像のセンスも初監督作品とは思えない質の高さです。これまで韓国映画をリードしてきたのはいわゆる386世代(30代、80年に大学に通った1960年代生まれの人達)でしたが、まさに新しい次世代監督の時代の到来を感じさせました。386世代の監督以上の大胆な映像、エンタテインメント性、その中でも、社会を見る鋭い視点もしっかり持ち合わせています。2000年前後に『シュリ』のカン・ジェギュ監督やパク・チャヌク監督に会ったときのような衝撃を受けました。次回作はまだ未定ですが、エンタテイメント性を保ちつつも重みのある映画を作りたいと抱負を語ってくれました。
「『美しき野獣』を見て、『親に電話したくなった』とか『好きな人に告白したかった』と思っていただければうれしいです」というキム・ソンス監督。まだご覧になっていない方はもちろん、一度見た方も新たな視点でこの作品を鑑賞してみるのはいかがでしょうか。


監督のプロフィールは…次ページで!>>
  • 前のページへ
  • 1
  • 4
  • 5
  • 6
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます