実際にあった事件を元に作られた作品
来日時のショット。クォン・サンウは会見ギリギリに到着し、大きな歓声を浴びた |
「もともとは『犯人たち』という別のシナリオを書いていたのです。主人公も悪党も皆結局は犯人だった…というような。その過程で、偶然に3年前に韓国で起きた検事の話を知りました。その事件は韓国では大きな論議を巻き起こしました。映画の中でオ・ジヌ(ユ・ジテ)が経験したような事件です。(注:劇中オ・ジヌは捜査していた事件の関係者を脅迫したとされて不法捜査と暴力容疑で起訴され、有罪判決を受ける)その事件を知って「これだ!」と思い、その時書いていたシナリオと事件を重ね合わせて新たにシナリオを書き直しました。
オ・ジヌに社会への怒りを込めた
―映画を見たときに、実は実話をもとにしたのではと感じました。監督の怒りが伝わってきたからです。「元になった事件では、組織暴力関係で有名な検事がいたのですが、尋問の過程で水拷問にかけたのではという疑いをかけられました。事件を聞いたときは『検事側が悪い』と感じたのですが、ふと『その奥には人間的な、われわれには知りえないストーリーが隠されているのではないか』と思うようになりました。その物語を具体化したのがこの映画に登場するオ・ジヌになったのです。実際の事件の真相は分かっていませんが、韓国社会には本当に罰されるべき人をきちんと罰することができない、そんな現実があるのではないか、ということをこの映画で伝えたいと思いました」
―罰されるべき人を罰することができないというのは具体的にどういう歴史を語っているのですか。
「例えば軍事政権時代に暴力で権力を行使した人たちがいます。それに反対し抵抗し、命さえ失った数多くの人たちがいるにもかかわらず、その人たちを罰することとは未だ誰もできないのです」
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