路線変更してのKYギャグ
『パン屋のヤコブ―複雑な世の中のための心やさしい哲学』著:ノア・ベンシー 翻訳:デーブ・スペクター(DHC) 翻訳家としても活躍するデーブ。英語はもちろん、日本語が堪能でないと勤まらない仕事です |
その頃、デーブのジョークを聞いたあるタレントから「今のジョークは自分で考えたんですか?」と訊ねられ、かなり気分を害したようでした。少なくてもアメリカでは、頻繁に参加するパーティ用のジョークを全て自分で考えたりしません。ジョークについての考え方が日米で大きく食い違ってる代表例でしょう。
その辺りから、ジョークに対しての意識も少し変わってきたようで、パーティジョークの本にそのまま載ってるようなネタは、徐々に影を潜めてきました。それに変わって増えてきたのが、自らを笑う自虐ギャグと、いわゆるおやじギャグ。最近の言葉で言えばKYギャグでした。
日本人は自虐ギャグが好き?
「僕はガイジンなのに漢字読めるんですよ。空気は読めないけどね」 。たぶん、ここ数年のデーブ・スペクターが発した中で、たぶんいちばん受けがいいジョークでしょう。彼自身のパーソナリティを一言で表現しているという点でも、ハイレベルと言えるのでは。KYギャグにしても、デーブが喋ると、一種の自虐ネタに見えてきます。というのも、まったく場の空気を読まずに繰り出すわけで、ほとんどの場合失笑状態になります。ただ、それを想定のうえで、KYギャグを連発してる姿は、まさに自虐的です。
たぶん、日本人が自虐ギャグを好きなのを察知して、自身のジョークに取り入れた結果なんでしょう。謙譲の美徳を知る日本人は、自虐的ギャグを聞いても、それを鵜呑みにして相手を見下したりはしません。自己主張することが正しいとされる欧米とは、笑いのツボ一つをとっても違うようです。
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