お祝い・ギフト/贈る時のマナー

おもてなしのプロが語る「マナーとは」(2ページ目)

元レ・クレドール正会員で現在マリテーム代表取締役の池田里香子さんをご自宅に訪ねました。日本とフランスの一流ホテルで積まれた、その貴重なコンシェルジュ経験を通して、「マナーの真髄」について語っていただきました。

執筆者:冨田 いずみ

海外のお客様にも認められた「最善を尽くす」姿とは?

池田さんが日本のホテルにコンシェルジュとして勤務されていた頃、お世話されたお客様の9割が諸外国から来訪された方々で、様々な贈答機会にも立ち会われたとのこと。日常茶飯にあるのは、まず日本から帰国する際に持ち帰られるお土産、そして滞在中、招待されたところへお贈りするものや持参される手土産など。

たとえば、蘭の鉢を届けるように依頼された場合、ただ美しい蘭の鉢にふさわしいメッセージカードを添えてお贈りするのでは最低限であり、コンシェルジュの仕事としては不充分。先様の好みや飾られる場所との色合いなど、花ばかりでなく、鉢の形・素材までも入念に配慮して、しかるべき。ここにも最善が尽くされ、感動を呼ぶ結果を導くお手伝いに努力を惜しまない姿勢が見て取れます。
 

日頃の対人関係や複数の提案をする余裕も大切

あるお客様が日本滞在中に結婚記念日を迎えられ、本国サンフランシスコにいらっしゃる奥様に1時間以内に100本のバラを贈り届けて欲しいと依頼されたことがあるそうです。今のご時勢、ネットや地域の花屋さんから国内外問わず手配できるようにはなりましたが、はたして確実にできる以上のサービスをきっかり1時間以内に提供できるかというとあやしいものです。美しい揃いのバラを1時間で100本、生花店でもなかなか在庫できているところはありません。どこかにはあるかも知れないし、送れるかも知れない、でも、ギリギリ辛うじてできるというレベルでは、万が一間に合わない場合、それはコンシェルジュとして失格で、できても最低ラインというわけです。

そんな時、池田さんは笑顔で「かしこまりました」と、親しく信頼できる現地ホテルのコンシェルジュに1本電話を入れるだけで、事足りたと言います。そして、電話口の落ち着いた答えはもちろんイエス、「で、メッセージは何にする?」という明るい声が続いたとのこと。なんてスマートな仕事ぶりでしょう! 確実に手配できるネットワークを国内海外を問わず持ち、不可能を可能にするのがコンシェルジュ。お客様の突発的なリクエストにも対応できる、極めて多様で広範な知識の「答えの引き出し」を備えていなければなりません。

しかも提案は1つでなく、2つ3つと案を持つことも大切。たとえば、あきらかに完売していると思われる演劇や歌舞伎のチケットを依頼された場合、「あいにくそちらは人気で、こちらでしたら入手可能でお好みの演目に近いかと思われますが」と納得いただける結果を提示する余裕が無ければならない。目的を完遂するだけでなく、難しい過程であっても、事が成就する過程をお客様と一緒に考え愉しみ、親身になって問題を解決することがコンシェルジュの役目と心得えること。

そのため、休みの日も心穏やかに、人に親切に明るく過ごすよう心掛け、喜びを持って物事を行うよう努めているのだそうです。「ロビーとはパブリックスペースであり、ホテル内外の日頃の対人関係が重要で、いかに協力体制や連携がうまくいっているか、高いコミュニケーションスキルが問われる場」だと語る池田さん。
自分ひとりの力には限界があるけれども、みんなで助け合えば達成できることばかり。 皆さんの日常にも共通することがあるのでは? コミュニケーションのお手本はロビーに学べ! ですね。 
 

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