マナー・作法の情報提供をする際、机上の座学ではなく、かねてから一番信頼できると感じていた実践者で、接客やプロトコール(国際儀礼)を極めた人にこそ学んで伝えたいと思っていました。

最初に思い浮かんだのは、日本とフランスの一流ホテルでコンシェルジュを勤め上げ、今はその育成に尽力されている池田里香子さんのお顔でした。お客様のどんな無理難題もNOと言わず、いつもにこやかに最善の方法論と人脈を駆使してサービスを提供する、まさに「おもてなし」のプロ。今回の取材は、その計り知れないホスピタリティの一端に触れられると同時に、現役時代に巡って来た数々の贈答機会を通して、その見事な対応と心配りから、マナーの真髄までお伺いしました。

最高のホスピタリティは“感動”を与えること

優しさの中に凜とした印象のある池田里香子さん

優しさの中に凜とした印象のある池田里香子さん

初めて家族と訪れたパリの美しいホテル「プラザアテネ」のロビーで、幼い少女が出会った優しい笑みを湛えた運命の紳士こそ、コンシェルジュその人だった……。まるで映画の冒頭シーンを彷彿とさせるこの美しい記憶が、やがて池田里香子さんがコンシェルジュという道を目指す動機となったと言います。

「心地良く快適な宿泊環境を提供するのは、一流ホテルではあたり前のサービス。その滞在を素晴らしかった、もう一度泊まりたいと思わせる、印象的で記憶に残すものにするには、100%以上のプラスαの努力が必要。それが無ければ、お客様を想像以上に感動させることは出来ない」と断言する池田さん。 

お客様には満足だけでなく、“感動”を与えること、それがコンシェルジュの一番大切なミッション。「コンシェルジュに必要な資質、それは語学力、几帳面さ、誠実さ、正直さ、そして何より人の喜びを自分の喜びとできる優しさ」と池田さんは語ります。

知識やスキルより資質が大事であり、コンシェルジュの資質とはつまり先を読む力、人の心を読む力であり、それが原動力となって、人の役に立ちたい、喜ばせたいという気持ちと、人に感謝されることによって満足感を得たいという気持ちが、ホスピタリティの精神を築き上げるという、それは高潔な哲学であり、人としてあるべき至高の姿と感じ入りました。これは、おもてなしをする際、誰にでも通じることですよね。