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退団――宝塚を去る日の思い(3ページ目)

憧れて入った宝塚。しかし退団したならもう二度と宝塚の舞台に立つことはありません。堪らない淋しさを感じながらも退団する生徒たちは、最後の最後まで自分の力を出し切ります。

桜木 星子

執筆者:桜木 星子

宝塚ファンガイド

最後の舞台に燃焼するだけではなく、退団者が必ずすることがあります。それは同期生や組子のみんな、スタッフの方々やお世話になった方々へのご挨拶状を書くことです。

“今までありがとうございました”という意味合いの挨拶が印刷されたカードを作り、そこに自筆で一人一人にメッセージを書いていく。最後の公演中、寮や自宅で相手の顔を思い浮かべながら書く……。これまでの色んなことが思い出されます。

私事ですが――私は退団する時、千秋楽に涙を流しませんでした。一粒でも涙がこぼれたなら止まらなくなってしまうのがわかっていたから。それと笑顔でお別れしたかったから。

私、究極の強がりなもんで。だけど苦しかった……。あたたかく接してくれる家族同然の同期生、涙を浮かべながら踊ってくれる上級生、泣きついてくれる下級生、客席に見える、ハンカチを手にした両親やファンの人。

時間を見つけては楽屋のトイレに駆け込んでいたっけ。ティッシュで拭くと化粧がくずれるから、綿棒を目頭に当てて涙をぬぐい……。すべて終わり、一人きりになって緑の袴を脱いだ後、声を上げて号泣しました。堪らない淋しさと明日からはもう一人ぼっちだという不安。そして「よく頑張ったね」と自分を誉める自分もいて、だけど先のことはまだまったく考えられなくて。
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