去る3月1日——黒の紋付に緑の袴姿の87期生42名が、宝塚音楽学校を卒業しました。舞台に立つために必要なダンスや歌などの実技、厳しい規律を予科・本科の二年間で学んだ彼女たち。卒業証書や予科生から手渡された花束を手に涙ぐむ人もいます。

しかし思い出に浸る暇はなく、宝塚歌劇団の入団式、そして初舞台の稽古が待っています。彼女たちはこの日から、本名ではなく芸名を名のるわけです。

宝塚の舞台に必ず登場する場面、それはラインダンス——通称“ロケット”。通常の公演では研究科1~4年あたりの下級生が踊りますが、初舞台生の出演する公演では初舞台生のみで行われます。

全員が一列になり同じ高さに足を上げて踊るロケット。昭和2年、日本最初のレビュー『モンパリ』以来の宝塚のシンボルです。

ロケットを踊るために初舞台生は稽古に稽古を重ねます。ロケットに一番大切なのは“全員の振りが揃っている”という点。これが難しい! 

まず身長の差があります。低い人はより高く、高い人は加減して同じ高さに揃えなくては。
また手をつないだり腰の後ろで組んで足をあげると、押されてどんどん前に出てしまう。手を無造作に上げてしまうと、隣の人のかぶり物にぶつかってしまう。コツを掴むのに相当の稽古が必要です。

大劇場という初めての空間に慣れるのにも時間がかかります。
あの舞台の大きさ、客席との距離感、銀橋(オケピットと客席の間にあるエプロンステージ)の長さや渡りづらさ……。

自分の立ち位置を“上手の通路から下手に何番目”というように客席の席順で覚える技などに体がなかなか付いてゆきません。