時間枠を考えるとそれなり
テレビ朝日系がすべてミステリーものでかためた三作はそれぞれの時間枠を考えるとそれなりのポジション。『パズル』は石原さとみが「そうは見えないけど三十代」というヒロインのキャラクターに無理があります。石原さとみを少しでも目立たせようと考えた設定でしょうが、実際は二十代前半の石原さとみではしばしばその設定を忘れてしまいそうになります。『TRICK』で仲間由紀恵が「貧乳」とよばれたみたいに、若そうに見えるけど実際に三十代の女優が捨て身で演じると笑える設定でしょうが。これを筆頭に『TRICK』みたいにしようとして全体に無理が目立ちます。
ただこの金９枠、ヒトケタ視聴率のドラマを量産していたなかで10％は着実にクリアしているので、比較すればいい方です。金９枠とTBS系22時からの金曜ドラマ枠は日テレ系の映画とフジ系の二時間ドラマの裏でともに苦労していました。しかし『パズル』はいい方だし金曜ドラマ『Around40』も好調。この４月からフジ系金曜プレステージのスタートが一時間前倒しになったため視聴者の流れが変わったのかもしれません。
『７人の女弁護士』も裏が『渡る世間は鬼ばかり』であることを考えれば役割を果たしています。メンバーと決めゼリフ（「逃げる場所はありませんよ」から「残された答えはひとつです」に）以外は前作と同じですね。
『キミ犯人じゃないよね？』も23時台の金曜ナイトドラマ枠としては平均的な視聴率。宇田川刑事役・要潤のおバカ演技はなかなか見応えがあります。ただその分、ヒロイン・森田さくらが推理とストーリーを進行するのに忙しくて貫地谷しほりを生かし切れていない印象。『TRICK』や『時効警察』のように男女コンビがそれぞれボケ・ツッコミあうパターンに持って行けばもっとおもしろくなると思います。
低迷
『無理な恋愛』は主人公・立木正午は「若いころにグループサウンズのボーカルとして一斉を風靡」でさらにかつてのバンド仲間役にムッシュかまやつ、とほとんど堺正章そのものの設定。現在はレコード会社の役員待遇で、いわゆる「勝ち組」なんですけど、彼に感情移入できるような人はそうはいないでしょう。かついたとしてもあまりテレビドラマを見るとは思えません。一番感情移入できるのは特別出演の坂口憲二が演じた菊原。上司の正午をにあこがれて目標にしていたけど、情熱がなくなった今の姿を見て「立木さんみたいにはなりたくない」と会社を辞めていきます。ものすごく視聴者の気持ちを代弁した行動でした。
『おせん』、初回は大石静脚本でそれなりだったと思いましたが、大石脚本は初回限定でそれ以降の担当はなかなか発表されず、２話で発表された脚本家名は「神ひとえ」。誰それ？「紙一重」？
２話の内容は「味噌造りはとってもたいへん」というはなしだったはずですが、見てても大豆の選別に手間がかかるぐらいしか苦労が伝わりませんでした。なんか原作コミックのよさをうまくだせていないような気がします。
原作コミックのよさを出せていないことでは『ホカベン』も同じ。裁判で逆転するところの鮮やかさや、裁判後も問題を残して現実の厳しさを語る内容はいいと思うのですが、その前段階として新人弁護士・堂本灯役の上戸彩が奮闘するところがどうもあっていません。コミカルキャラが似合う上戸彩にリアルな役をさせるのに無理があります。
そして今回最大の期待はずれは『猟奇的な彼女』。個人的にさっぱりおもしろいと思えません。初回で「クララが山羊の足をつかんでグルグル振り回してる」とかTBSが映画・ドラマで制作したセカチューのパロディとか後半の「ただし条件がある」数珠つなぎとか、笑うところなんだろうけど、さっぱり笑えません。視聴率も日曜劇場にしては低いところを見ると一般的にも同じような判断なんでしょう。どこが悪いとかそういう問題ではなく根本的なところが間違っているような気がします。
さて残るは５月スタートの『ハチワンダイバー』と『CHANGE』。
なんといっても木村拓哉主演の『CHANGE』が『ごくせん』を越えられるのかが注目ポイント。『ごくせん』が先に26％台という数字を出してきたので、30％ぐらいの高い目標を目指さないといけませんね。番宣を大量にしてくるのは間違いないし、スタート日はフジ系は『CHANGE』デーになるでしょう。おそらく番組を見て答えるクイズ企画も投入して、なんとしても視聴率をとりにいくことでしょう。
最初だけ上げてもつまならなかったら２話以降下落するので、内容をよくすることも忘れないでいてほしいところです。
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