『岸辺のアルバム』(77)
原作・脚本:山田太一 演出:鴨下信一ほか 制作:堀川とんこう
出演:八千草薫、杉浦直樹、中田喜子、国広富之、竹脇無我
「テレビドラマの一里塚」といわれ、ドラマオールタイムベスト10を選ぶと、しばしば一位に選ばれる傑作。ただし平均視聴率は14.1%(ビデオリサーチ関東)と有名なほどにはそれほど。
多摩川沿いにすむ一見平和そうな中流家庭が舞台。しかし実はバラバラで、妻(八千草薫)は日常に絶えきれずハンサムな男(竹脇無我)と互いの家庭を壊さないという約束で浮気、夫(杉浦直樹)は仕事のためならモラルも捨てる会社人間、娘(中田喜子)はアメリカ人にだまされて犯され中絶、大学受験中の息子(国広富之)はそんな家族の秘密を知り思い悩み、家出してしまいます。
崩壊寸前の家族は、多摩川の氾濫によりローンで建てた家を流されて終わり、結末で家族の再生をにおわせてはいますが、根本的にはなにも変わっていません。
堀川とんこうプロデューサはどうみても地味な原作をどうにかしようと努力。家が流される結末があらかじめわかる掟やぶりのタイトルバックを自ら演出し、また「等身大ドラマ」とのキャッチフレーズを捻出しています。
ただもっと人気女優を主演にという意見は「白いパンツをはいた主婦に見える」と八千草薫で通しましたが。
原作・脚本の山田太一は、「メシ食いドラマ」と呼ばれていたホームドラマを「実際の家庭はあまりみんなが集まらない」と嘘がなくリアルに描こうとしていました。
メイン演出の鴨下信一は網膜剥離で半年休んだ後の復帰作で、これが最後かもと、山田脚本の意に添い徹底的にリアルに追求。初回、八千草薫に「自分の家なんだからセット内を目をつむっても歩けるように」と注文したそうです。
『淋しいのはお前だけじゃない』(82)
脚本:市川森一 演出・制作:高橋一郎
出演:西田敏行、泉ピン子、木の実ナナ、財津一郎、河原崎長一郎、萬田久子、山本宣、潮哲也、原保美、梅沢富美男
これについては前回のガイド記事・コラム「この番組はフィクションで…」に書きましたので参照してください。