「キャラクターとセリフのミスマッチ」
ドラマの三要素はストーリーとキャラクタとセリフだと思いますが、北川脚本では大ヒット作でも、ストーリーはひねりのない少女マンガみたいな感じで凝ったものではありません。ポイントは登場するキャラクターが生き生きとしていることと、当代随一のセリフの冴えでしょう。
ところが『ラブストーリー』はキャラクター設定に疑問があるため、いいセリフがたくさんありながら白々しく思えることがあります。特に美咲(中山美穂)とユミ(畑野浩子)の女性編集者二人は、崖っぷちにいる契約社員にも東大を主席に近い成績で卒業した優秀な編集者にも見えません。「先生は私にとって指針だったから。目印、空に光る星だったから」などとドラマと切り離して見るといいんですけど、ドラマを見ていると尊敬する小説家に向かって元担当者がタメグチでいいのか?とツッコミを入れたくなります。
「北川脚本と中山美穂のミスマッチ」
北川脚本でおなじみの俳優といえば『その時ハートは盗まれた』『あすなろ白書』『ロングバケーション』の木村拓哉、『愛しているといってくれ』『最後の恋』の常盤貴子の『ビューティフルライフ』コンビです。この二人の演技タイプはナチュラル派で、北川脚本にはよくあっています。それに対して、中山美穂はいつものミポリンであまり合っていないようにみえます。『愛しているといってくれ』を経験した豊川悦司はいいんですが。
しかし、後半になるとオーソドックスな恋愛ものの要素も強くなってきました。特に蓼科久美子(戸田菜穂)と死んだ姉がらみのエピソードの部分。
昔から北川悦吏子は「ユーミンみたいなドラマを書きたい」といってます。ユーミンの曲と北川脚本の共通点は何か。それは「過去の恋愛をふりかえる」パターンが多いことだと思います。
『ビューティフルライフ』は杏子が死んだ後からの回想の視点、『君といた夏』『最後の恋』はタイトルから過去形、『素顔のままで』『あすなろ白書』『愛していると言ってくれ』は「あれから何年後」パターン、とほとんど過去を振り返っています。
北川脚本が恋愛ものでもドロドロしないのは「想い出は美しい」からですね。それが隠れた人気の秘訣だと思います。
それに対し同じく恋愛ものが得意な内舘牧子脚本『昔の男』はただでさえドロドロなのに過去の恋愛が再び、だからますますということですか。
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