味覚教育に無理強いは禁物。焦らずに
美味しさと値段のバランスがとれているものがいい食材 |
「味覚については10人いたら10人の味覚があるので、そんなにこだわったことはしていません。それよりも例えば嫌いなものがあった時に、一応『食べなさい』ということは言いますが、無理に食べさせることをしないようにしています。
みなさんも経験があると思うのですが子どもの頃は嫌いでも、大人になったら食べられるようになった、好きになったという食材って結構あると思うんです。自分自身もそういった経験がありましたし。なので、子どもの頃に無理に食べさせることで、精神的にその食材を拒否してしまうことのないようにすることの方が大切だと考えています。」
「ファストフード=悪」ではない
ファストフードや外食産業も必要な存在 |
「今は選択肢もたくさんある時代ですし、教育というのは各々の家庭の判断ですればいいと思います。その中にファストフードを食べさせる、食べさせないというもの入ってくると思うんです。
今の社会は『ファストフードは悪い』という風潮になっていますよね。ですが、子どもたちの同級生のお父さんにファストフード産業で働いている方がいるかもしれないと考えたら、『友だちのお父さんを悪者にしてしまうのか?』ということも考えてもいいのではないかなと思うんです。その方たちはその仕事をすることによって、家族を養っているわけですから。」
他者への敬意を身に付けて
同じことはグルメ産業についても言えます。和食の場合によくあるのが、天然物が良くて、養殖物が駄目だというような評価。もちろん天然物は美味しいのですが、では養殖物がまずいのかと言ったら、物によっては天然物よりも美味しい場合もあれば、負けないものも多いのです。実際に私の店でも、良いものであれば養殖物も使っています。そして何より養殖に関わっている人々に対して敬意を払うべきだと思いますしね。」笠原シェフのお話を伺っていると、いろいろなものに対する尊敬の念がベースにあって、こういった発言が出てくるのだなぁという印象を持ちます。食育というと食材や味覚の部分に注目が行きがちですが、こういった気持ちを教えるのも食育のひとつです。ぜひ、お子さんの成長の段階で、他者に対する敬意が身に付くようにしてあげたいものですね。