甘え下手な子供にイライラ……上の子(長男・長女)の心理とは?
「可愛かった上の子が、下の子が生まれた頃から、だんだん可愛くなくなってきた」「自分で出来ることをしなくなったり、下の子をわざと泣かせたりの行動が目立ち、イライラすることばかり」
甘え上手な下の子に対し、甘え下手な上の子、いつの間にか、その差はどんどん広がってしまう、そのように感じることはないでしょうか。
最近では「上の子可愛くない症候群」という言葉も見られ、上の子への対応に悩んでいる親も増えてきているようです。甘え下手な上の子の心理や対応法を説明します。
下の子が誕生した後、親を悩ませる上の子の困った言動
下の子が生まれると、上の子が今まで自分で出来ていたことをしなくなったり、わざと親を困らせることはないでしょうか。例えば次のような言動です。- ミルクや母乳を欲しがる
- 自分で出来ていたことを「ママ、手伝って!出来ない」と甘える
- 家事をしていても、まとわりつき、過度にスキンシップを求める
また、以下も親の気持ちを自分に向けるための言動ですが、先ほどより反抗的になります。
- 何かにつけて駄々こねたり、わがままを言って親を困らせる
- 下の子を泣かせたり、イタズラをしたりする
- おもちゃを投げたり、乱暴なことをする
これらは、全て上の子が「自分もかまって欲しい」「自分の方を向いて欲しい」という気持ちの表れです。何故、どのような心理状態から、上の子はこのような言動を起こすのでしょうか。
赤ちゃんの誕生は、上の子にとっては大きな環境の変化
今まで周囲の注目を一身に受けていた上の子ですが、弟や妹が誕生してから、急に周りの大人の関心が赤ちゃんに向けられてしまいます。親は赤ちゃんのお世話で、上の子への関わりはグッと減ってしまうでしょう。これは上の子にとっては大きな環境の変化で、一大事です。何故なら、幼い子どもは、食事や排せつなど、養育者(親)に生活のほとんどを依存して生きており、親から見放されると生きていけないと感じるからです。
笑っていても、泣いていてもどんな時もOKと、受け入れられていた「無条件の愛情」は、下の子が誕生してから、ゆらいできます。
そこで幼い子どもは、親の気持ちを自分に向けさせようとしたり、どんな時も認められているという確信を得るためにも、親に反抗したり、わざと困らせる態度を取ったりすると思われます。
「ママは自分のことを嫌いになったの?」と大きな不安を抱き、赤ちゃん返りや反抗をして、親の気持ちを取り戻そうとし、愛情を確かめてきます。それは自分が自分らしく、ありのまま、生きていくための防衛本能とも言えるでしょう。
親の上の子への期待が、更に甘え下手にする
一方で親の方は、下の子が生まれて家事育児に大変忙しく、上の子に対し、「少しでも手伝って欲しい」
「できるだけ手を煩わせないで欲しい」と思うことでしょう。
そのような中、親を困らせる言動を繰り返す上の子にイライラし、「上の子も、下の子も同じように愛している」「兄弟姉妹同じように接しよう」と思っているにも関わらず、きつく言葉をかけることが増えているかもしれません。
そうなると、親の気持ちを取り戻そうとしている上の子は、益々親に素直に甘えることができず、親は上の子が更に可愛くなくなるでしょう。
では、具体的にどのように関われば、上の子との親子関係はうまくいくのでしょうか。
上の子に「愛してるよ」が伝わるスキンシップや言葉をかける
先ずは、上の子が赤ちゃん返りをしたり、反抗したりするのは、下の子が誕生すれば、とても自然であることを理解しましょう。本能的な自己防衛であり、自分の存在を一生懸命保って、生きようとしていることに気づいてあげてください。そして甘えてきり、困らせることをしてきた時は、その気持ちをしっかり受け止めましょう。「親に愛されている」ことを確かめに来ているのですから「愛しているよ」という気持ちを言葉やスキンシップで、しっかり伝えてあげてください。
そうすることにより、「大丈夫、ママは自分を愛してくれている」と安心し、親を困らせるような言動は治まっていくでしょう。
具体的対応事例「下の子を叩く」
次に、よくある兄弟の状況で、具体的に説明していきます。「上の子が、積み木で遊んでいる時、下の子が壊してしまい、上の子が怒る、下の子を叩く」
このような場合は、一旦、上の子の怒りを受け止めてあげましょう。
「せっかく作ったのに壊されて、腹立つよね、悲しいよね」と声をかけ、下の子に向かって
「お姉ちゃんがせっかく作ったんだから、壊しちゃあダメでしょう!」とその場で言いましょう。
そうすることによって、上の子は「ママは自分の悔しい気持ちを分かってくれている」と感じます。その上で「弟はまだ小さいから、よくわからないのね」「あなたも小さい時は、こうだったのよ」や「きっと、お姉ちゃんと一緒に遊びたいのね」と言ってあげましょう。
具体的対応事例「上の子が無理にママを独占する」
下の子を抱っこしていたら、赤ちゃんを押しのけ、無理に自分も膝の上に乗ってきたりなど、ママを独占しようとする場合、これもよくありますね。その場合、次のように声をかけてみてはどうでしょうか。「ママは、弟が生まれてくるまで、お姉ちゃん一人のママだったわ。でも弟にとってママは、生まれた時からお姉ちゃんと半分。だからね、その分、一緒に弟を可愛がってあげましょうね」
そうすると、親が自分を信頼してくれているという気持ちと、「ママと一緒に下の子を大切にする」という連帯感が生まれ、上の子との親子の絆が強まっていくでしょう。
下の子が誕生したら、心がけたい日頃の上の子への関わり
下の子が誕生すれば、上の子に対し次のことを心がけておきましょう。■スキンシップ
1日1回は、必ず上の子を抱きしめるなど、意識してスキンシップを取るようにしましょう。上の子とのスキンシップや会話が大切なことは分かっていても、忙しさに紛れ、つい忘れがちです。毎日必ず決めて行いましょう。
■感謝の言葉
手伝ってくれたり、待ってくれたりすれば必ず「ありがとう」の言葉をかけましょう。そうすると、自分が役に立ったこと、必要とされていること、大好きなママが自分に感謝していることから、上の子は、自分の存在価値をより確認できるでしょう。
■「待って」は具体的に
上の子には、「待って」「後で」の言葉が多くなります。その時は「赤ちゃんのミルクが終わるまで、待って」「赤ちゃんが眠ったら絵本を読んであげるね」など、具体的に伝えてください。上の子は、いつまで待てばよいのか分からず、不安になります。見通しを立てれる具体的な言葉をかけましょう。
上の子の複雑な胸の内、理解してあげましょう
下の子が出来て、上の子が赤ちゃんに逆戻りしたり、反抗的になったりするのは、それまでの親子関係が上手くいっている証拠でもあります。子どもは、「ママを困らせても、きっと受け入れてくれるだろう」というある程度の信頼感があるからこその言動なのです。そして一見、甘え下手にも感じる上の子の心の内は「ママへの信頼」に、「ゆらぎ」「確かめ」「取り戻そうとする思考錯誤」が複雑に絡まり、懸命に生きているのです。そう思うと、上の子の甘え下手も愛おしく感じますね。
下の子が誕生したら、上の子は、急に「お兄ちゃん」「お姉ちゃん」になれるのではありません。上の子の気持ちをじゅうぶん理解してあげて接してあげましょう。
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