子育て中の母親たちに読んで欲しい「こころのテキスト」
「自分勝手なエゴイズムで子どもを支配する親が多い中で、『子どもを愛せない』と一度でもつぶやいたことのある親は人間的です」(名越氏) |
誰だって、自分の心の闇を覗き込みたくはない。できればそっとしておきたい。しかし子育ては有機的な、血の通った(通わせざるを得ない)作業を積み重ねることでしか進んでいかない。自分が親から受けたあれこれを無意識に子どもに返している、そんな連鎖もまた、子育ての特徴でもある。自分を見つめずには、子育てはできないのだ。
猪熊氏はこの本の後半部分で、「自分の娘を愛せない。娘を殴りつけている自分の姿を想像してしまう」というA子さんのカウンセリング風景を詳細緻密に追っていく。名越氏が緩やかに、しかし冷静で確かな足取りで寄り添い、導いていくカウンセリングからは、読み手も必ず何らかの糧を得るはずだ。「実際の事例を深くえぐっていくことで、普遍的な何かを抽出できる」という名越氏の言葉どおり、それは子育て中の母親たちが自分自身を見つめ、「自分の中の他人と出会う」きっかけを得られるテキストとなっている。
猪熊氏は、「自覚的に『親』を演じ、自らの親を見捨て、許す」ことで「十全な親になる」ことができると結論する。「今の世の中で、ちゃんと親を演じられたとしたら、それはすごいことだと思いますよ」とは、名越氏の言葉。親とは、意識して「なる」もの。その意識が、私達を「子どもを殺す母」ではなく「子どもを愛せる母」にしてくれるのだろう。
猪熊弘子さんがガイドを務めるAll About[幼稚園・保育園]