息子がかわいくて仕方ない…子供を溺愛する母親が増殖中?

息子がかわいくて仕方ないという母親は多いもの

息子がかわいくて仕方ないという母親は多いもの

男の子のお母さんと、女の子のお母さんの子育て観には違いがあるという。どこかの国には「母にとって、娘は永遠の友達、息子は永遠の恋人」なる言葉もあるとか。「男の子のお母さんには、普段はどんなにお澄まししていても、息子の話になると人が変わったように嬉しそうに話す人が多い」と話す保育関係者も。

かく言うガイドも、「女の子」育ての後に「男の子」育てを経験することになって、思いがけず息子溺愛にどっぷりハマった。息子溺愛ぶりを恥ずかしげもなくあちこちで垂れ流し、とうとう「息子に口(くち)チュー、いつまでOK?」なる記事まで書いてしまった。すると同じ息子ラブ母たちから「私も息子に口チューしまくってます!」旨の投書をどっさり頂き、「息子ラブ」に共感してくれる母の多さと、その情熱にびっくりしちゃったのである。
 

ヤバいよママ、目を覚まさなきゃ!

だが、前述の「息子に口チュー、いつまでOK?」には、「おいおい」というツッコミの投書もまた、多かったのだ。

「そういう母がマザコン男を育てて、結局その妻が苦労することになる。目を覚まして!」
「そんな『口チュー』母にベタベタに甘やかされて育った息子には、自分の娘を嫁がせたくない。何をされるかと思うと、恐ろしい」

……などなど。なるほど、ごもっとも!

いかーん!どうやら息子溺愛のあまり、我を失いかけていたかもだ。そうそう、やっぱり子どもは自分のペットじゃないんだから、人格のある「ヒト」なんだから、母も自分を律しなくちゃね。子どもに愛情をたっぷり注ぐことと、溺愛との線引きをしなくてはいけない。では、「過剰な息子ラブの結末=自立できないマザコン男育成」に陥らないための、傾向と対策とは?家族心理学のエキスパート、生田倫子(いくたみちこ)先生に聞いてみました!
 

息子ラブ母たちの性格的共通点とは?

息子ラブ母は非常に面倒見の良い性格

息子ラブ母は非常に面倒見の良い性格

息子を溺愛する母たちは、総じて優しく、非常に面倒見の良い性格傾向にある、と生田倫子先生(武蔵野大学 人間関係学部講師)は分析する。

生田先生:性格を構成するいくつかの要素の中でも、エゴグラムで言う、NP(養育的傾向)の高い人たちが多く、基本的にお世話好きで、困っている人に手を貸したいという気持ちがあり、さらに他人の失敗に寛大という傾向があります。

それゆえに、子どもが生まれるまではむしろ夫(彼氏)に対して尽くしたり、アドバイスしたりするのが好きだった人が、子どもが生まれると、対象を変えてその保護的性質を思う存分に発揮することになります。子どもに愛情を注ぎ、保護することは、社会的価値観の中でも良しとされることなので、この性格的傾向が加速されてしまうこともあるわけです。

ガイド:なるほど。でも、同じ子ども相手でも、娘だとそれほど溺愛にならず、息子だとどっぷり溺愛になってしまうのは、どうしてですか?

生田先生:自分を必要とし、愛してくれていて、甘えてくれる。子どもと言えども男性として見た場合、母性が強い女性が男性に望む全てがかなえられた、「理想の男性」となってしまうのです。
 

息子がかわいくて仕方ないとはいえ、パパが「蚊帳の外」になっては?

ガイド:しかしそうやって溺愛した結果、「マザコン男」が出来上がってしまうことは、私たちもなんとなく経験的に知っていることですよね……。

生田先生:そうですね。特に男の子の思春期以降、母子密着はどうしても弊害を招く恐れがあります。お母さんの理性的な対応と、心理的距離を離す努力が必要となってくる時期ですが、経験から言って、この時期になっても息子を手放せないお母さんには、家庭内にある特徴があります。

ガイド:それぞれの家庭内に共通する特徴ですか?

生田先生:そうです。残念なことですが、問題と思えるような母子密着を示すお母さんたちには、夫に家庭参加を期待していない、または実は夫とうまく行っていないという人が多いのです。うまく行っていないのにそれを直視していない、そういう場合もあります。

うまく行かないのは息子を一番に溺愛して夫をないがしろにしたから、とも考えられますが、どちらが先とも言えません。卵が先か鶏が先か、どちらにせよ、子どもが思春期に入るお母さんは更年期などで不安定になりがちなのに、ちょうどその頃夫は仕事に脂が乗って多忙になってしまいコミュニケーションが不足するという、年代的な問題も関わってきます。

ガイド:身体的な変化から精神的に不安定になってしまった妻の悩みを、夫が受け止めず、より一層息子へと全てを注いでしまうわけですね。ちょっと話を聞いて欲しい、甘えたいという妻の気持ちの持って行き場が息子以外にないと。

生田先生:ですから、そこで息子が反抗期に入ってしまったりすると、たちまち不安定になってしまうお母さんが沢山います。反抗期のない息子というのは、実は『お母さんを不安定にしたくない』という気持ちが働いている場合もあるんですよ。

ガイド:そして、「息子に依存する母」と、「ママ第一のマザコン男」が出来上がってしまうんですね……。

生田先生:反抗というのは、自分は親と違うという自己主張。自己を確立するのに必要なプロセスなのです。思春期の息子溺愛は、結果的に男の子の正常な発達を妨げてしまいます。屈折した問題行動を起こす場合に、その原因としてよく見られます。

ガイド:でもほら、エディプス・コンプレックスとかってあるじゃないですか。息子は無意識にお父さんからお母さんを取りたいと思うって。お母さんが息子と仲がいいのは、いいことではないんですか?

生田先生:エディプス・コンプレックスとは、お父さんからお母さんを奪いたいと思うのに奪えないという葛藤のこと。この葛藤を通して、男の子は一人前の男として力をつけ成長すると、精神分析学の一派では考えられています。ですから、そのような葛藤こそが男の子を育てるのであって、お母さんと息子が無条件に密着していたら、その葛藤がなくなってしまうのですよ。言い換えるなら、お母さんがその子の成長する機会を奪ってしまっているのです。

ガイド:うーん、それは確かに大きな問題ですね。そんな風にして育ってしまった息子は、性格的にも問題とか出てきたりしないんでしょうか?

生田先生:一部には、女性との付き合いは全般的にOKでも、男社会に適合できず、自分よりも目上の男性、例えば先輩や上司との関係構築が苦手で不適応を起こす子もいます。また、ママの言うなりになって自分で考える力や難所を乗り越える力が薄れる子もいます。

ガイド:思春期の母親の溺愛が、その子の将来に大きな影を落としてしまうことになると……。厳しい現実ですね。では、男の子が思春期に差し掛かったら、母親はどうしたらいいのでしょうか?
 

マザコン息子回避のポイントは「夫婦連携」にあり!

ガイド:息子が思春期に差し掛かったら、心がけるべきことは何でしょうか?

生田先生:中学生になったら、お父さんの客観的な視点が重要になってきます。社会で必要なこと、マナーやルールを、お父さんの視点からきちんと教えてあげて下さい。そのためには、何であれ父と子の触れ合いが大切なんです。何も仲良く野球することだけが父子の触れ合いではありません。反発やケンカ、ただの話し合いでも、何でもOK。とにかく関わることです。

以前、ある少年が家庭内暴力と不登校を起こしているカウンセリングケースがありました。そのご両親に「子どもの前だけでも、父母の仲が良く見えるようにしてください」という家族心理学療法の介入をしたことがありますが、状況はてきめんに改善されました。

その頃の子どもの正常な発達にとって、子どもの視点から見て父母が連携を取れているように見えること、父母が一つのチームになっていることが、とても重要なんです。

ガイド:重要だけど、父と母が連携を取るというのは、その頃にはなかなか難しいことのようですね?

生田先生:家族ライフサイクルの研究結果によれば、子どもが思春期にさしかかる頃、つまり結婚から15年程度経過した時期というのが、夫婦にとってお互いの満足度が最も低い時期なのです。日本の女性は第一子誕生以降、子ども第一になる傾向が強く、15年ほど経過したあたりが最も夫婦の心理的距離が大きいです。息子ラブ母は、自分からその溝を深くしてしまう。夫からすれば、「それじゃ家と子どものことは全部妻に任せて、僕は仕事に邁進するよ」となりかねません。

ガイド:なるほど、夫婦の心理的距離……。これが熟年離婚の温床である、とも言われた話ですね。(⇒「子育て夫婦の結婚生活の危機とは?」)夫婦と子ども、その良いバランスを取るには、どうしたらいいんでしょうか?

生田先生:まずは、お母さんが子どもだけに偏重してお父さんの存在を「無視」したり、軽んじたりしないことが大切です。次に、妻は夫とコミュニケーションをとる努力を積極的にする。つまり、子育てをする家庭では、子どもとお父さん、お母さんの心理的距離を適正に保つ努力や働きかけが必要なんですよ。

それから可能ならば、男性が子育てに参加するというのは、家族にとって非常にメリットがあるんです。夫婦が子育てをすることによって、子どもが小さいうちから共通の話題、共通の興味が持てる。母親が子育て、父親が仕事、という分業をしている家庭が、もっとも夫婦の不満度が高いという研究結果も出ています。

やはり、子どもが思春期になって突然パパにご登場願っても、子どももパパも抵抗が強いのです。子どもが小さいとき、お母さんは心身ともに疲れきってしまうことが多いですから、パパに子育て参加を促す、そのエネルギーを割くのが面倒というのも分かります。でもこれは将来に向けた予防だと思って、積極的にパパを子育てに誘ってみて下さい。

――夫婦機能を高める努力が、結果的に男の子の思春期の負荷を弱めるというお話。勉強になりました!生田先生、ありがとうございました!
(取材はこの記事の初回公開日2006年8月に行ったものです)

⇒生田先生の大好評連載【素敵に生きる小さな工夫】が読める!
上質で美しい生活を楽しむClass Magazine『美生活』
『家族心理.com』家族問題、家族療法を専門とする、気鋭の心理学者・カウンセラーグループのホームページ


【監修】 武蔵野大学 通信教育部 人間関係学部講師
生田倫子
東北大学大学院教育学研究科博士課程修了。教育学博士、臨床心理士、家族相談士。家族心理学、心理面接過程におけるコミュニケーションを研究。
臨床活動として、病院臨床・児童養護施設カウンセラー・スクールカウンセラー・被害者支援などを行ってきた。

連絡先:MCR(NPO法人・不登校引きこもり研究所)
『家族心理.com』

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