NHKで30年に渡って放送され、親しまれてきた
英語版「セサミストリート」が打ち切りになりました。
代わって、テレビ東京系で10月から日本語放送が開始。
どうして打ち切りに?どうして日本語に?
セサミ新生の裏事情を探ります。
NHKが日本語版制作を断った
33年間親しまれてきたセサミストリート=(C)Sesame Workshop(New York). |
代わってその約半年後、2004年10月からテレビ東京が系列6局で日本版セサミストリートを放送開始(毎週土曜朝9:00~9:30)。内容は全くの日本オリジナルで、マペット(セサミの登場人物ならぬ『モンスター』)たちと絡む役割の日本人のお兄さん、お姉さんが劇中に登場し、マペットたちも日本語を喋ります。関西弁を喋るキャラクターまで登場し、従来の英語版セサミストリートとは異なる、独特の番組構成となっているのです。
新生「日本語版」セサミストリート。長く英語版セサミに親しんできた者は、正直、少し当惑せずにはいられません。実は、テレビ東京系で放送されるようになった経緯の裏には、米国版セサミストリート制作者であるセサミワークショップの「日本語版を制作し、放送して欲しい」という要請を、NHKが断った事実があるのです。
なぜ日本語版が作られるのか
30年以上も親しまれてきた英語版セサミではなく、なぜ日本独自のセサミストリートが必要なのか。これを理解するには、非営利団体(NPO)であるセサミワークショップの理念が重要になってきます。35年前に米国で生まれたセサミの基本理念、それは「世界中の子供たちに教育の機会を!」というものだったのです。
現在、セサミストリートは120にも及ぶ国々で放送され、世界中の子どもたちがこの番組を通して母国語と母国の文化を学んでいます。そして、番組から得る教訓を子どもたちが自分自身の体験に照らし合わせて学べるよう、これらの放送は世界で20の共同制作プロジェクトによって供給されています。その国のプロデューサー、ディレクター、脚本家などのスタッフが、その手でセサミストリートの理念を番組にしているのです。
そのため、各国の放送はそれぞれの文化や事情に合った、特色のある内容となっています。エジプトでは特に女性の識字率が低いため、女子教育に重点の置かれた番組が制作されています。また、南アフリカの放送では、国内で増えているHIV母子感染児童を励ますために、HIVを抱えて生きるという設定のマペットが登場しました。紛争地域であるイスラエル、パレスチナの放送では、違う立場にあるもの同士がお互いを受け入れ、感謝し、友情を結ぶというポジティブなテーマが強調されています。
そして2004年の今年、アフガニスタンとバングラデシュの子どもたちもまた、それぞれの母国語によるセサミストリートを目にする機会を得ることになりました。
この流れの上に、日本語版セサミストリートの誕生があったというわけなのです。
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