3ヶ月の乳児を預けて働く
大学在学中に長女を出産した私は、当時のゼミの教授の話に安心して娘の生後2ヶ月から大学に戻った。
当時の教授の持論は
「子供は3~4ヶ月で保育園に預け、お母さんは社会参加するのが当然の社会となるべき」。
昨今やっと専門家にも一笑に付されるようになったものの、「『母親による』3歳までの家庭での養育」を最上とする3歳児神話派にはとんでもないと映るかもしれない。
私は娘を夫の母に預かってもらい、保育園に預けたわけでも、フルタイムワーカーになったわけでもなかったので、それほど「とんでもないことをしている」という意識はなかった。周囲にも同じようにして通学している学生は何人もいたので、それも助けになっていた。
海外の大学や大学院では、日本よりも通学する年齢層に幅があるのでさらにそういったケースは多い。むしろ、キャリアウーマンが大学院に戻ることでキャリアをスローダウンし、そこで出産もしておこうというのも一般的。またはキャリア志向であるゆえに、社会に出てから出産の機会を持つよりは今のうちに、という大学生もいた。そうやって育児をしながら授業に出ている女性とそのパートナーの男性も、たくさん見ていた。
少子化の影響で、先進国では労働人口が減少傾向にある。日本でもそれは同じ。それどころか、女性がきちんと労働力となり、納税の義務を果たさないと、社会保障制度自体が危うくなってしまうご時世。女性は労働力としてカウントされているのが当然なのである。
外国人ベビーシッター
さて、日本よりも早くに少子化を迎えていたフランスの話。女性の社会的地位に関する意識は、周知の通りかなり高く、フルタイム志向が強い。ただし、フランスのフルタイムの法定労働時間は35時間と短いのが、日本と違う前提。
早くに「女性が社会に出られる仕組みづくり」を意識した結果、子供の保育環境はすこぶる恵まれたものとなっている。たとえば乳児保育に関しても、3~4ヶ月児を積極的に預かるという民間保育機関が多い。母親も保育機関も、それに抵抗がないのが、日本との最大の違い。保育園が終わると、ベビーシッターにお迎えを頼み、夜までのケアを任せる。
その際に日本と事情が違うのは、南米やアフリカ、アジア出身の外国人労働者をベビーシッターとして雇用する事ができること。日本では正規ビザを取得してベビーシッターとして働く人は非常に少なく、不法就労となるケースが多い。現実的にベビーシッターを雇うコストが、日本が段違いに高くなるのもこういった事情からである。
それでも、フランス人女性の平均的な月収の多くがそのベビーシッター料金に飛んでいく。一方それよりもコストの高い日本では、ベビーシッターというサービス自体が贅沢となってしまうのは、ご承知の通りである。ちなみに日本での平均的なベビーシッター料金は、シッター派遣会社を通じて1時間あたり2000円前後。フランスではその4分の1から。ティーンエイジャーや外国人ベビーシッターが一般的なアメリカでも、8ドルを超えることはあまりない。