個人的にショッキングなニュースであった。米国のあるリサーチによると、米国内の男性の平均寿命を職業別に統計してみたところ、もっとも寿命が長いのが医師・弁護士、もっとも寿命が短いのが専業主「夫」だという結果が出たというのである。
専業主夫の寿命が短くなってしまう要因としては、ストレスが一番とのこと。世間の、”stay-at-home dads”に対する無理解や偏見が、彼らの精神と肉体を蝕んでしまっているという。ホント??
しかし、専業主夫と、stay-at-home dadsは厳密に言うと同義ではない。専業主夫とは、「家庭外」貨を稼がず、家事に専念する夫のこと、stay-at-home dadsは、妻がフルタイムで働くなどしていても、自分は家庭内でできる仕事などに就いて「外貨」を稼ぎつつ、子育てと家事の大部分を担う夫のことである。
だから、「リング」「らせん」で著名なジャパン・ホラーの旗手、作家・鈴木光司さんは、ご自身を「作家兼専業主夫」とユーモアを交えてご紹介されることがあるようだが、米国風にはちょっと違う。家庭で執筆活動を続けながらも、お子さんを学校へ送りだし、家事全般を担っていらっしゃるという話なので、専業主夫ではなくstay-at-home dadsと呼ばれてしかるべきのようだ。
では、家にいながらにして主夫業をする男性は、作家などの特殊な職業だけなのかと言うとそうではない。90年代の高速情報化にともなって急速に増えた、SOHO型個人事務所を経営する男性が、フルタイムで働く妻に代わって家事と育児の多くを引き受けるというのも、stay-at-home dadsに多い事例のようである。
この100年の歴史の中で、男女が共に得た最大の恩恵は、「人生の選択肢が増えたこと」だというのが、欧米の通念らしい。私もまったく同感。しかし、自分が納得して選んだ道が社会の理解を得られないがために、当人が寿命をすり減らしてしまうというのも切ない話。
しかし、しかしである。こんな統計が出てくるということ自体、米国のstay-at-home dads人口の多さを物語ってはいまいか。大体、職業の項の中に「医師」やら「弁護士」やらに混じって「専業主夫」という項があるなんて、日本では考えられないことである。
米国の育児サイトを見ると、stay-at-home dads同士が情報を交換したりするサイトが散見される。それが、意外にも盛り上がっている。潜在的な人口が多いのだ。
「初めてウチの娘が、ボクの離乳食を食べた!」という歓喜の報告とか、「公園で、他のお母さんたちに交じって子供を遊ばせるのが難しい」なんていう身に覚えのある悩みなど、子育ての実感って洋の東西も男女の別も問わないんだなぁと、思い知らせてくれる。
雇用の形態がこれだけ流動的になってきた上に、男女問わずいつだって職を失うリスクを背負っている現代。少なくとも2人のパートナーシップで子育てをするのであれば、それこそ流動的に、妻も夫もどちらもが「外に出る」または「家にいる」ことを選べるのが常識化したほうが、社会全体が健全に暮らせるんじゃないだろうか。
そうしたら、好きでstay-at-homeなのにもかかわらずストレスで早死にするような不幸もなくなると思うのである。男女共に。
【関連サイト】
・Parentstages.com(英語サイト)
・Parentsoup.com(英語サイト)