世界を作るために青いレールがあった
|
プラレール開発者の方に教えてもらった、プラレールの正しいはずし方。車両をひねるとスムーズにはずれるように作ってある。こんなところにも開発者の目は届いている |
細部までこだわりのプラレール列車。しかしプラレールはただ飾っておく模型ではないのだ。青いレールの存在を忘れてはならない。ここにプラレールの一番のひみつがあるのではないかとガイドはにらんだ。
「プラレールの列車は日本全国のものを出しています。なぜなら、子どもにとって一番魅力的な列車は、自分の家の近くを走っている列車だからです。日本全国の子どもたちが、自分にとって一番魅力的な近所の列車を手にできるようにしているのです」。プラレール開発室の方の目線は、日本全国すみずみまで見渡している。「また、日本全国の列車を出すことで、リアルな情景を作りだすことができます。たとえば旅行の思い出を作ることもできるのです」。夏休みに行った田舎町や、初めて乗った新幹線の旅。レールをつなぎ合わせ全国の列車を組み合わせれば、子ども自身の手で、旅行の楽しかった思い出を再現することができる。サウンドを使い、情景部品を使い、レールをつなぎ、子どもの記憶に残った世界を子ども自身の手で作り出すことができるのだ。そして、子どもがレールをつないで夢想した世界は、いつか自分自身で作り出すに違いない未来の現実世界にも、つながっているのだ。
プラレールの遊び方に、正解はない
開発担当者の方は、熱く語りだした。「プラレールには、こうじゃなきゃいけないという決まりはありません。自由に遊んでほしいのです。プラレールは、ブロックと同じ構成玩具なのです。レールとレールをどうすればつなげられるんだろうと、子どもが自分で考えてほしいのです。ですから、レールのレイアウト集などはあまり出さないことにしています」。なるほど、プラレールとは、一種のパズルなのだ。しかも正解はない。正解がないからこそ、いつまでもレールをつなぎ続け、いつまでも遊び続けることができるのだ。子どもが夢中になるプラレールのひみつが、かなりわかってきた。「レールをつないでいくことが、子どもの教育や育成になるのです。ですからプラレールで遊ぶ時は、たくさんのレールを使って遊んでほしいのです」。プラレールの青いレールは実に多種。その理由はここにあったのだ。
開発者の願いは「モノこそ思い出」
開発担当者の方の熱い話はなおも続く。「プラレールのレールは販売開始以来40年以上規格が変わっていません。だから、おとうさんが使ったプラレールを今も使うことができるのです。おじいちゃんやおとうさんが遊んだプラレールで、子どもが遊べるのです。かつて使った事があるおもちゃなら、おじいちゃんもすぐに孫と一緒に遊び始めることができるのです」。3世代が一緒に少年になれるのがプラレールなのだ。そういえばこんなおもちゃは日本に他にあるだろうか? 自分が子どもの頃に遊んだ古ぼけたプラレールをわが子に渡す時、父の気持ちはどんなものだろう? かつて遊んだプラレールをわが子とともに再び手にした時、幼い時の記憶は鮮明に蘇るのだ。「……僕は、モノこそ思い出だと、思っているのです」。プラレールに向かい続けて20年、開発担当者の方は少し微笑んで遠い目をしながら、ガイドにポツリと言った。