セーラー万年筆
10月都内で開催された
セーラー万年筆 新作発表会
10月4日、東京両国でセーラー万年筆の新作発表展示会が文具店をはじめ流通関係者を対象に開催された。例年この時期に開催されており、私もここ数年取材をさせていただいている。特に今回は、いつも以上に万年筆に力が入っている展示内容になっていた。セーラー万年筆のペン先職人の長原宣義氏による数々の万年筆をはじめ、面白いところでは、これまでとはちょっと違う蒔絵をほどこしたものなども参考出品されていた。

今回の記事ではそうした中で、この秋に発売される万年筆の新作2本の情報をいち早くお届けしたいと思う。


大人の男性がさりげなく持てる赤い万年筆

セーラー万年筆 還暦万年筆 KAN
セーラー万年筆 還暦万年筆 KAN

まず、個人的に最も注目したのが、「還暦万年筆 KAN」である。入学祝いに万年筆というのは、よく聞くが、還暦に万年筆とはちょっと不思議な感じもする。実はこの万年筆、セーラー万年筆のペンクリニックでペンドクターとしてお馴染みの川口明弘氏のプロデュースによるものだ。折しも、川口氏は還暦を迎える。川口氏によると、今、還暦を迎える方々は、中学や高校の入学の時などに万年筆を手にし、万年筆にとりわけ親しみのある世代なのだそうだ。そうした方々に還暦を迎えた今、もう一度万年筆を手にして欲しいという願いから今回プロデュースしたと言う。

セーラー万年筆 還暦万年筆 KAN
プロフェッショナルギアの
レギュラーサイズがベースになっている。

還暦万年筆とはいっても、年配の方向けという感じは微塵も全くなく、なかなかの格好よさがある。ベースとなるボディは、プロフェッショナルギアのレギュラーサイズ。ご覧いただければおわかりの通り、ボディが赤で仕上げられている。還暦と言えば赤いちゃんちゃんこだが、この万年筆でもその赤が使われている。そもそも、還暦と赤の関係はと言うと、「本卦還り(ほんけがえり)」と言って、干支が60年で一巡して再び自分の生まれた年に戻る。つまり、赤ちゃんに戻るとして、赤いちゃんちゃんこを、という意味と、重ねて老け込んでいくのではなく、むしろより明るくと言う意味もあるのだそうだ。

今回のKANには、ビビッドな赤ではなくシックな赤が使われている。川口氏によると、これは「日本古来の赤」のだそうだ。ボディをよくよく見てみると、微妙に異なる3色の赤が使い分けられている。

セーラー万年筆 還暦万年筆 KANセーラー万年筆 還暦万年筆 KAN
ペントップと尻軸側は最も濃い赤
ボディは、キャップと首軸とで微妙に異なる赤が使われている。

ボディの両端はかなり濃い赤、キャップは落ち着いた赤、そして先軸はやや明るめといった具合だ。この配色はキャップを外して尻軸にかぶせてみると、その意味がよくわかる。こうすると、グラデーションのようにキャップのてっぺんからだんだんと赤が明るくなっていく。

セーラー万年筆 還暦万年筆 KAN
キャップを尻軸にセットすると、
上からしだいに明るい色になるようになっている。

若い世代であれば、赤のペンを持つことにおそらく何の抵抗感もないだろう。しかし、今、還暦を迎えようという方々はひょっとすると少しばかり違和感があるのかも知れない。今回のKANではそうした世代の方々にも気軽に手にすることができるようあえて落ち着いた赤にしたのだという。

セーラー万年筆 還暦万年筆 KAN
21金24金メッキのペン先。字幅はEF、F、Mのみ。

ペン先は、EF(極細)、F(細字)、M(中字)の3種類。あえて太字のBは今回用意されていない。これは、川口氏のこだわりのひとつで、ご本人は万年筆というものは細字で書いたほうが日本語がより美しく書けるという考えを持っておられる。年を重ねて久しぶりに、再び万年筆を手にする方々に、美しい文字を書いてもらいたいという願いが込められているのだろう。

セーラー万年筆 還暦万年筆 KAN
セーラー万年筆 還暦万年筆 KAN 31,500円
限定品ではなく、定番商品として展開されていく。
10月中旬から出荷開始

今回の商品名である「KAN」は、還暦と言う意味の他、実はもうひとつ「感性」という意味も込められている。これは、川口氏がペン作りにおいて日頃からテーマにされていることだそうだ。

還暦を迎える方々だけでなく、若い世代が持ってもいい一本だと思う。