良い革を低コストでカバンに仕立てる試み
m+「DUNA」各色29,400円(税込) 色は、写真のブラックのほかブラウンがある |
m+(エムピウ)のカバンは、このガイド記事でも何度も紹介しているように、ガイド納富はとても気に入って使っています。とは言っても、良い革を贅沢に使って、細部までこだわって作られた、それらのカバンは、やはり、それなりの価格になってしまって、どれもこれも買うというわけにはいきません。
そんなユーザーの声に応えて作られたのが、今回のショルダーバッグ「DUNA」です。A4ファイルサイズが楽に収まる、大判ですが、マチを薄くすることで、スマートな印象に仕上がったショルダーバッグで、なめらかで良質なキャメル(らくだ)の革をふんだんに使っていますが、この質感、この大きさで、価格は3万円を切っているのです。
背面はポケットとステッチで綺麗にデザインされている |
しかし、細部を見ると、ポケットを多数用意した内装といい、しっかりしたショルダーベルトといい、いつもながらの丁寧な縫製といい、コストダウンするために手を抜くといったような形跡は見当たりません。多分、フラップ部分の裏を付けないとか、端を切りっぱなしにするといった部分が、コストダウンのための工夫なのだと思うのですが、それも、例えばフラップの端の切りっぱなしは、全体のちょっとワイルドなムードを強調するデザインにもなっている、といった具合で、このあたり、一級建築士でありデザイナーでもある村上雄一郎氏ならではの、計算された設計を感じます。
ショルダーバッグに合うキャメルという革の特色
キャメル革のアップ。とてもしなやかな育ちやすい革だ |
今回、素材に選ばれたキャメルは、やわらかく滑らかで、でもとても丈夫という、カバンに向いた素材です。ただ、あまり使われることがないのは、革がちょっとワイルドというか、革素材そのものに、元々付いているキズや皴が多いため。これは、革製品好きの間でも意見が分かれる所ですが、「革は傷がついたり、使用感が出てこそ魅力的になる」というユーザーもいれば、「なるべく傷は付けたくないから、型押しが好き」というユーザーもいます。また、新品状態で傷や皴があることを嫌がる人も多いのです(まあ、新品ならキレイな状態がいいと思うのは当たり前ではあるのですが)。
フラップを開いたところ。切りっぱなしのフラップが軽くて扱いやすい |
そして、これも革にはよくあることですが、傷や皴になりやすい革や、素材的に傷や血筋、皴などが避けられない革の方が、使っている内に、とても良いツヤが出て、肌触りも良くなる、いわゆる育ちやすい革であることが多いのです。現に、ガイド納富は、この「DUNA」を一ヶ月ほど使ったのですが、たったそれだけの期間でも、革のツヤが増し、身体にフィットするようになりました。ショルダーバッグという、常に身体に接触する形状は、革を育てやすいという事情もあり、キャメルのショルダーバッグは、それはそれは育ちやすいのです。革は使ってこそ、と思っている方には、とても嬉しい素材です。
薄マチの大判ショルダーの使いやすさ
内装の高い位置にポケットがあるので、出し入れの多い小物に便利 |
スタイルは、かなり薄マチの縦型ショルダーバッグです。縦型といっても、やや正方形に近く、A4ファイルどころか、LPサイズのアナログレコードも収納出来ます。ライブや演劇のパンフレットによくある、A3変形の大きな本も入るのに、マチが薄いので、それほど見た目が大きく見えません。このあたりのサイズバランスの絶妙さは、エムピウのカバンならではですね。
また、縦型のカバンにありがちな、小さなモノがカバンの奥深くに入ってしまうと探しにくいという欠点を補うために、内装にはポケットが三つ、ファスナーポケットが一つ用意されています。しかも、横に並んだ三つのポケットは、カバンの結構上の方に付いていて、出し入れが簡単。またファスナーポケットは、カバンの上辺に付いているので、これもカバンの奥に手を突っ込む必要がありません。
大判の冊子や折り畳み傘、水筒が楽に入る大きさ |
薄マチの形状なので、ある程度大きなノートやファイルを入れた状態の方が使い勝手は良くなります。ガイド納富が使っていて感じたのは、A4などのファイルを入れた上から、雑誌や本を入れ、横の隙間に水筒や折畳み傘を収納。後の小物(デジカメやICレコーダー、携帯電話やUSBメモリーなど)はポケットに、薬や重要な小物はファスナーポケットに、といった使い方をすると、出し入れもスムーズで型崩れもせず、良い感じで使う事が出来ました。この場合、手帳や筆記具は、背面のポケットに入れます。
細部が嬉しい背面のポケットとショルダーベルト
手帳から文庫本、眼鏡やiPod、携帯電話など、頻繁に取り出す小物の収納に抜群の能力を示す背面ポケット |
背面にある、文庫本が楽に入る程度の大きさのポケットが、また、この「DUNA」の使いやすさのポイントです。このポケットが敢えて表でなく背面についているのは、身体に付く側にポケットを付けることでポケットの蓋が不要なこと、比較的大事なものが入れやすいこと、咄嗟の出し入れがしやすいことなど、多くのメリットがあるからだと思います。ガイド納富は、ここに仕事の場合は「ほぼ日手帳」を、散歩等なら文庫本を入れていたのですが、思い立った時に手帳を出し入れする、という用途に限った場合、このポケットのスムーズさは初めての経験でした。出して書いて戻すが、とても素早く行えるのです。もちろん、文庫本などを入れていて、ちょっとの時間でも読む、みたいな使い方にも最適です。
ショルダーストラップの余り部分は、本体サイドに収納できる仕掛け。ストラップも太くて方への負担が少ない |
また、ショルダーストラップを短めに設定した際の、ベルトの余りを横のマチ部分に収納出来るようになっているデザインも、ちょっとしたアイディアですが使って見ると助かります。ショルダーバッグの場合、ストラップの余りがぶらぶらするのは、外観を損なう以上に、歩きにくく、扱いにくくなるものなのです。それに、この横部分にループがあるおかげで、ここにペンを挟んだり、イヤフォンのケーブルを挟んだりと、ちょっとしたカスタマイズが出来ます。
ガイド納富の「こだわりチェック」
実は、ガイド納富は、ショルダーバッグはフラップ式よりも上部ファスナー式、または上部オープンタイプの方が使いやすいと思っているのですが、この「DUNA」のように、大判の本体に短いフラップというスタイルなら、あまり使い勝手の悪さが目立たないことに気がつきました。一枚革の切りっぱなしのフラップは、軽くてしなやかなキャメルだからか、上げ下げが楽ですし。
正直言えば、最初、この「DUNA」を見た時は、まあ普通に良いカバンかな、という感じで、それほど惹かれるものはありませんでした。ただ、使っている内に、まず、その大きさと、何でも放り込める袋型のショルダーの扱いやすさに、つい外出時には必ず持っていくようになり、そうやって使っていると、ポケットの位置や背面ポケットに入れた手帳の機動性の高さ、それほど大量には入らないけど、大きなものもスムーズに収納出来る、そのサイズバランスの良さなど、細部の良さに感動し、気がつくと、革の風合いが良くなっていて、いつの間にか自分に馴染んだカバンになっていました。
上の写真の黒と茶のカバン、よく見ると、黒の方が革のムードが良く見えると思います。これは、黒は一ヶ月使って、茶は使っていない、その差です。最初は茶の方が風合いがいいなあと思ったのですが、少し使うだけで、これだけの差が付いてしまいました。
<関連リンク>
・m+(エムピウ)のキャメルのショルダーバッグ「DUNA(ブラック)」はスタイルストアで購入出来ます
・m+(エムピウ)のキャメルのショルダーバッグ「DUNA(ブラウン)」はスタイルストアで購入出来ます
・m+(エムピウ)の公式サイトはこちら
(訪ねていくと、お得なアウトレットも購入出来ます)
・m+主宰、村上雄一郎さんの作り手ブログはこちら
・m+のショルダーバッグ「PIATTO ALTO」「PIATTO BASSO」を紹介した記事はこちら
・m+の柔らかブリーフケース「TENERA」を紹介したガイド記事はこちら
・m+のウェストポーチ「MARSUPIO」を紹介したガイド記事はこちら