量産ではなく、良産するための効率化
アルデックスの工場内。さすがに無駄がないというか、工場内は整理整頓されていました |
このことについて山口社長は「型紙の作成などの縫製の前段階まではシステム化によって効率的に生産すればいい。それ以降の縫製の工程にできるだけ時間をかけることで、着心地のいい良質のスーツが生まれるわけです」
つまり量産するためのシステム化ではなく、縫製工程の時間を増やすことが目的なのだ。
それぞれの縫製工程を見学させてもらったのだが、あまりにも工程数が多く理解できず(笑)、結局もう一回見せてもらった。
それぞれの工程が終わると必ず検品があり、厳しくチェックしている。OKが出れば次の工程に進むが、駄目ならやり直しである。出荷前に一度検査するだけだと思っていたのでけっこう驚いた。
匠塾
工場に隣接した工房(アトリエ)。ここでは週1~2回、匠塾を開講している |
この縫製工場の隣には工房があり、週1~2回、匠塾を開講している。
ここではアルデックスで働く技術者およびスーツ作りに興味を抱く人のために、ビスポーク(フルオーダー)の先生を招いて、採寸、型紙、補正、仮縫い、縫製などを教えている。
土日の開講日が多く、休日返還になってしまうのだが、それでも技術を学びたいという思いから参加する若者も多い。
実際にビスポークスーツを作ることで、単にスーツの構造を理解できるだけでなく、技術者の場合は、工場での各工程に反映することができるのである。
現在このような人材の育成を行っている縫製工場が日本ではほとんどないだろう。
海外ではイタリアのブリオーニが縫製学校を工場内に併設し、サルト(仕立て職人)の育成に力を注いでいる。
ブリオーニが世界的に評価されている背景には、こういう地道な人材育成を行っているからである。
アルデックスは世界的なブランドではないが、国内では高く評価されているトップクラスの縫製工場である。
技術を次の世代に継承することが、現在もっとも大切なのだ。
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