すべての工程を一人でこなす
Vick tailorのVickは、もっとも偉大なるダンディー、ボウ・ブランメルが飼っていた犬から付けたとか。ちょっと気になって調べたら、英国王室が飼っているコーギーの名前は本に載ってました。ウィンザー公が飼っていたパグの名前は何でしたっけ? それにしても英国人は犬が好きですね。 |
高い天井が光をうまく分散させているためか、店内は明るく、優しい雰囲気に包まれている。老舗テーラーのような威圧感もない。
近藤氏はお客さんの採寸、型紙、生地の裁断、縫製、仮縫い、納品までの工程をたった一人でこなす稀有な人である。
ロンドンのサビル・ロウや銀座あたりの老舗になると、カッター(お客さんを採寸、型紙、生地の裁断、仮縫い、納品をする人)とテーラー(この場合は仮縫いや本縫いをする人)に分かれている。
ちなみに仮縫いは、イギリスではカッター、日本ではテーラーが行うことが多いという。
なかには採寸するだけの人や、生地だけを選ぶ人もいるそうだ。またテーラーといってもトラウザーズ(パンツ)を縫う人、ベストを縫う人、ジャケットを縫う人、さらにボタンをつけたり、まつり縫いをするフィニッシャーと呼ばれるテーラーもいる。
Vick tailorの仕立て職人、近藤卓也氏。写真で見ても仕立てのよさがわかります。 |
そのメリットは、お客さんの身体的な特徴や趣味性を把握しているため、スーツづくりの各工程に反映しやすいということだ。
たとえば、採寸したデータ(数字)だけを見て、違う担当者が型紙をおこしたり、どんな人が着るかもわからずに縫製するのとでは、出来上がったスーツが微妙に違うのではないかと思う。
もちろんカッターがしっかりと舵取りをして、テーラーとの意思の疎通がうまくできていれば問題ないだろう。
Vick tailorのような小規模なテーラーで、なおかつヤル気と才能を備えた仕立て職人がスーツを手掛けると、妥協することがなく、非常に完成度の高いスーツが出来上がる。