勤めている会社によって許されるならコードレーン(コットンの畝織地)やシアサッカーのジャケットにオックスフォード地のボタンダウン・シャツ、黒無地のシルク・ニットタイを合わせてみるのも面白い。さしずめ雰囲気は初期の007映画に出てくる、米国中央情報局のフェリックス・レイターといったところだ。
このように涼感をオフィスに運ぶ努力というのも真夏のコーディネートには大切だと思う。暑いからといって半袖シャツにネクタイというのは避けたい。我慢できないなら長袖を折り返すまでにとどめるべき。これがビジネススーツの着こなしのマナーだ。
ラグジュアリーな生地と、実用的な生地
秋冬の素材は梳毛糸(ウーステッド・ヤーン)と紡毛糸(ウーレン・ヤーン)の生地があるが、細くて長い繊維の梳毛が中心だ。なかでも厳選されたメリノ種の羊毛(オーストラリア、タスマニア)は繊維が細く“スーパー・ファイン・メリノ”(太さ17.5ミクロン)と呼ばれ、羊毛番手「スーパー100’s」で知られている。
それ以上細い繊維のものは、「スーパー120’s」「スーパー150’s」と表示され、数字が大きくなるほど、柔らかく光沢のあるラグジュアリーな生地になっていく。とうぜん値段も高い。ビジネススーツとしてなら「スーパー120’s」で十分だ。
それとは対照的にここ数年、フランネルやツイードといったざっくりした英国の紡毛生地も人気が高く、チョーク・ストライプのグレーフランネルなどが再注目され、すっかり定番化している。
こういった打ち込みのしっかりした英国生地は耐久性があり、実用性に富んでいるので一着は揃えたい。長い目で見ればけっきょくは得ということだ。