最近は薄手のナイロンコートが人気ですが、男のスーツスタイルには、コットンやウール素材で、生地のハリ感が強く、直線的なラインが美しく描かれるギャバジンのコートが似合います。
マッキントッシュの別注トレンチ
マッキントッシュのトレンチコート12万6000円(エディフィス 渋谷tel.03-3400-2932) |
ダブルガンフラップ式のベルテッドトレンチコートは、エディフィスが英マッキントッシュ社に別注したものです。
英国のマッキントッシュ社といえば、1822年に英スコットランドで、開発されたゴム引きの防水生地。ギャバジン織りのコットン素材をサンドイッチ状にして、間に特殊なゴムを挟んだもので、防水・防風性能はもちろん、ハリのある生地がシャープなシルエットを描くことで人気のブランドです。近年は素材の乗せ変えやデザインのバリエーションを増やしたりモダナイズするなど、さまざまな試みもあって人気の衰えが見られません。ほぼ同時期に耐水布を生み出した英国コートブランドとして、アクアスキュータムと双璧を成す人気を誇っています。
マッキントッシュは、多くのセレクトショップで別注モデルが取り扱われています。なかでもエディフィスはその品揃えが充実していて、素材や色だけでなく、型から別注モデルをオーダーできるほど良好な関係を保っています。
ここで紹介しているコートも、ベルト付きのトレンチとして、マニッシュなデザインが特徴的です。ディテールもかなり凝っています。
フラップ付きのベローズポケット。雨水の侵入を防ぎならが容量が大きく小物の収納に適しています。 |
雨を避け、寒気から保温・防風するためのトレンチコートも、男の機能服として相応の役割を担っています。細部には機能性を考慮した作りこみが各所に見られ、このポケットひとつとっても、手抜きのない様子が見られます。
「ベローズ」とは「蛇腹」の意味。マチ付きのポケットをベローズポケットといい、サファリジャケットやミリタリージャケットなど、機能服のディテールに見られるデザインです。フラップ付きのポケットは雨やホコリを避けるための機能性の表れ。つまりドレス服には無いディテールです。
もともと洋服には外で着るための服と、室内で着るための服という明確な分類があります。コートでもフラップが付いていないポケットが付属するものは、室内での着用を前提としたものである場合が多く、こういう仕様がついていると、服の本質を知っている人が作ったのだな、ということがわかるのです。
ウールのライナーにはハウスチェック柄が使われます。 |
ボタンで取り外しが可能なウールのライナー。真冬にマッキントッシュクロス1枚では保温性に不安があるので、ウールのライナーが付くものが多いのです。
ライナーのチェック柄は内側だし、人に見せるものではないのですが、英国のブランドは、このチェック柄を非常に大切にしています。自社の製品のアイデンティとして、格子の比率や線の色などにこだわり、ことあるごとに使用します。これはマッキントッシュのもので、わりとベーシックなタッターソール風のチェックですね。アクアスキュータムやバーバリー、ダックスなど英国ブランドはみんな同様のハウスチェックを持っていて、このあたりが老舗ならではの顔といえるところです。
ちなみに、スコットランドには「スコットランド・タータンチェック協会」という団体があり、貴族の家紋や軍隊の紋章、ウエアメーカーなどが自社で作り出したタータンチェックに名前を登録しています。有名なブラックウォッチも、スコットランド軍の一師団の紋章として制服などに用いられていたものだそうです。
次のページでは、ギャバジンではないのですが、男のワードローブに欠かせないコートをご紹介します。