男の腕時計/スイスの老舗高級ブランド

トゥールビヨンの元祖、ブレゲの新作に注目(2ページ目)

高度な誤差補正機構のトゥールビヨンを搭載する複雑時計が人気の的。スイスの時計展示会でも、毎年さまざまなモデルが発表される。ブレゲは今年、画期的な3モデルを揃えて、発明者そして元祖の貫録を示した。

執筆者:菅原 茂

トゥールビヨンが宙に浮くミステリー

新作トゥールビヨンには、もうひとつ機構を見せたモデルがある。ムーブメントをスケルトン加工してメカニズムのすべてを見せた「クラシック トゥールビヨン・メシドール」である。

ブレゲ「「クラシック トゥールビヨン・メシドール」
「クラシック トゥールビヨン・メシドール」。手巻き、18Kピンクゴールド・ケース。直径40mm。予価1599万1500円

このモデルの場合も、単なるトゥールビヨンではない。冒頭で「メカニズムのすべてを見せた」と書いたが、厳密にいえば最も重要な部分が見えないという問題作だ。トゥールビヨンのケージと時計を動かす歯車を連ねた「輪列」とをつなぐ部分が見えないのである。トゥールビヨンが宙に浮き、どこからも動力の供給を受けずに自力で回転しているように思えて不思議である。見えないのは透明だから。じつにパラドックスに満ちている。

原理は、宙に浮いた針が時刻を示すかつてのミステリー・クロックとよく似ている。すなわち。2枚の透明なサファイアのディスクでトゥールビヨンを固定し、このディスクの外周が輪列構造と噛み合って回転しているのである。トゥールビヨンの魅力は、なんといっても回転ケージにあるわけだが、人を驚かすマジックのような手法でこれほどまでに強調した例もないだろう。

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