トゥールビヨンとは何か

雑誌の誌面などにも、最近たびたび登場する「トゥールビヨン」。フランス語で「渦巻き」を意味するこの言葉は、時計の専門用語で、特殊な誤差補正機構を指す。また、この機構を搭載する時計自身も一般的に「トゥールビヨン」と呼ばれ、商品名にも用いられている。

トゥールビヨンの発明者は、現在のブレゲを1775年に創業した時計師アブラアン・ルイ・ブレゲで、1801年に特許を取得している。機構の詳細については、別の機会に譲るが、仕組みの概要を説明すると、次のようになる。

機械式時計のムーブメントには、正確なリズムを作り出し、歯車の速度を制御する「脱進・調速装置」があり、時計の姿勢が変わると、この部分に働く重力の影響を受けて誤差が生じる。トゥールビヨンは「脱進・調速装置」自身を回転させて、重力の影響を相殺し、結果として精度の向上と安定を図る仕組みである。現代の腕時計では、回転する「脱進・調速装置」が文字盤から見えるようにデザインされ、トゥールビヨンを見分ける外観上の特徴になっている。

古典的な鎖引き円錐滑車を導入

今年のブレゲの新作トゥールビヨンは、いずれもサプライズに満ちている。まずはじめが「トラディション トゥールビヨン フュゼ」というモデル。このトゥールビヨンは、非常に凝っている。

ブレゲ「トラディション トゥールビヨン フュゼ」
「トラディション トゥールビヨン フュゼ」。手巻き、18Kイエローゴールド・ケース。直径41mm。予価1811万2500円

まず18世紀から19世紀の頃に作られたブレゲの懐中時計ムーブメントからインスピレーションを得て設計され、トゥールビヨン機構や部品や仕上げまでも当時の趣を再現している点だ。それだけではない。ゼンマイからの動力伝達に、鎖と円錐滑車を利用する「チェーン・フュジー(フュゼ)」という17世紀初頭に遡る古典的な仕組みが取り入れられている。動力伝達の際のトルクの安定化を図るためのものだが、現在の機械式時計では、A.ランゲ・アンド・ゾーネの特殊なトゥールビヨンを別とすれば、今のところ採用例は見当たらないという珍しい機構である。

しかもそれらをすべて文字盤側に配置し、サファイアのカバーガラスから見えるようにしたデザインも、時計愛好家にはたまらないだろう。もうひとつ加えると、トゥールビヨンのテンプとキャリッジにチタン、ケージを支えるバレットに非磁性ステンレススティールを用いるなど素材面でも画期的。外観は「超」の付くクラシックだが、このような部分にも最先端技術が生かされているのである。

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