「自分の長所」を再発見

パトリモニー・トラディショナル・マニュアルワインディング
パトリモニー・トラディショナル・マニュアルワインディング
手巻き、ピンクゴールドケース、アリゲータストラップ
168万円(2009年6月発売予定)

21世紀の先端的なハイテク指向を際立たせるのか、それとも伝統的な機械式時計の味わいを大切にするか。一見まったく正反対に思える二つの傾向が渾然一体になっているのがいまの高級時計の潮流といえるだろう。デザインがいかにもクラシックであっても、素材やムーブメントの機構などにハイテクが駆使されていたり、逆に外見が未来的でアバンギャルドではあっても、随所に伝統的な職人技が駆使されていたりというように、実際は要素が錯綜したものが多く、けっこう難解である。

今回、ヴァシュロン・コンスタンタンが発表した「パトリモニー・トラディショナル」の新作はじつに明快でわかりやすい。デザインもメカニズムも伝統的な機械式時計の秀逸な見本とも呼ぶべき仕上がりなのである。

製品は、中2針スモールセコンド付き、2インダイヤル・クロノグラフ、同じくクロノグラフにパーペチュアルカレンダーを加えたモデルの3 種。現代的な感覚に合わせてケース径が大きくなった点を別とすれば、外観は戦前から戦後にかけてヴァシュロン・コンスタンタンを印象づけたクラシックウォッチと酷似している。

パトリモニー・トラディショナル・クロノグラフ
パトリモニー・トラディショナル・クロノグラフ
手巻き、ピンクゴールドケース、アリゲータストラップ
468万3000円

採用したムーブメントがすべて手巻きという点にも、こだわりを感じさせる。ちなみに、中2針の「パトリモニー・トラディショナル・マニュアルワインディング」の場合は、新開発の薄型ムーブメントだが、クロノグラフとパーペチュアルカレンダー・クロノグラフの二つは、名機の誉れ高い伝説的なキャリバー 1141がベースになっており、オールド・ムーブメントの愛好者には見逃せない。このようにメカニズムに関しても「原点回帰」は一貫している。

ご覧のように現代的な新しさは無きに等しい。どこから見ても由緒正しい正統派の古典的な時計だ。新しもの好きには物足りないだろう。だが、斬新さを求めるあまり忘れがちになっていた機械式時計の良質な味わいがここには満ちあふれている。それがかえって「新鮮」に思えるから不思議である。ヴァシュロン・コンスタンタンにとっても、「自分の長所」を再発見した思いではなかろうか。


【問い合わせ先】
ヴァシュロン・コンスタンタン
TEL.03-3288-6597