異質なモノとのフリクションを楽しむ

アルファブレラ
ラインナップ変更によりエントリーモデルの2.2JTSセレスピード(440万円)から、ポルトローナフラウのレザーを使用したシートを備えるプレミアム(515万~615万円)、スポーティなTI(515万~615万円)まで6モデルを用意した。2.2リッターエンジンにはシーケンシャルミッションのセレスピード、3.2リッターには6ATが組み合わせられる

借り出したブレラは、直噴2.2リッターのJTS+6速セレスピード仕様だった。

さすがに、最新の同クラスモデルと比べると、ライドフィール質感に“古さ”を感じてしまうことは否めない。値段的にはかなり上だとはいえ、例えばドイツの最新Dセグメントクーペ、メルセデスベンツEクラスクーペやアウディA5クワトロあたり、と比べると、はっきり見劣りがする。冷静に比べてしまうと、そうだ。しかし……。

それを補って余りあるのが、“気分の問題”だと思う。A5もEクーペも十分スタイリッシュで、クーペ派のボクとしては乗るたびに欲しくなるクルマだけれども、ブレラにはハッキリと“暖かみ(人によってはより強くパッション)”がある。それが普通のクーペスタイルでは括れないユニークさに因るものだと理解するのであれば、乗っていてこの上なく晴れがましい気分になれる。クルマのデキ以前の問題として「格好いいクルマに乗っているんだなあ」という気持ちになり、心が自然とワクワクしてくるのだった。

ちょっと奮発して買った、いい服/いい靴/いい鞄を持って歩いているときのように……。

だから、というわけでもないけれど、どこにでも乗ってでかけようとは思わないところが曲者である。似合う場所かどうかを吟味して、ブレラで行くか他のクルマで行くかを考えてしまうのだ。もし自分の愛車がブレラ一台のみであったならば、このクルマの似合う場所しか行きたくなくなるわけで、そういう意味ではライフスタイルのコンセプトや方向性がしっかりと定まりブレない人でなければ、乗りこなせないということにもなるだろう。

ハナから沢山は売れないクルマだと思っていた。言ってみれば、アクの強さというか、融通の無さが、あまり多くの支持を得なかった理由なのかも知れない。もっとも、街で見かけないからこそ、新鮮さも失われずに今に至ったわけだけど。

確固たるライフスタイルをもって、颯爽とユニークなクルマを駆る。そんな人、いろんなメーカーの新車プレゼンではけっこういる風になっているけれど、実際にはそれほど多くない。ウソだと思うなら周りを見渡してみよう。「アクティブで、自分の価値観を見極めていて、仕事と家庭を大切にし、余暇や趣味も充実……」なんて人、周りにいっぱいいたりするだろうか?

こういうクルマは、なかなか難しい。逆に言うと、乗りこなせてしまう人が羨ましいと思う。クルマに負けない、何か動かし難い思いというか信念じみたものが、毎日の生活の中にあるような気がするからだ。しかも、それは規則正しい習慣のようなツマラナイものではなく、精神論や哲学論として明快な筋だろう。ブレラに似合うのは、そんな筋のある珍しい人である。

アルファブレラ
TIにはチタン仕上げの19インチホイールやスポーツサスペンションなどを装着。赤で仕上げられたブレーキキャリパーや専用のエンブレムも備わる

というわけで、日本じゃなかなか似合いそうな場所もなく、自分もこのクルマを颯爽と乗りこなせるほどブレない人生を送っているという認識があるわけでもないので、どこにも遠出できずに終わってしまうかなと思ったが、いくつかブレラで出掛けたい場所を思いついた。その場所とは……。

山深くわけ入った、ひなびた温泉宿。
向かう途中の小村の、旨そうなそば屋。
ふと見つけた街道沿いの、地産品直売所。
それほど整備もされていない、山間の峠道。

きっと、全く違うものとのフリクションを楽しむように乗ってやるのが、こういう極めつけにユニークなクルマでは大事なのだと思う。

だから、決して、こんなところにはブレラで行きたくない。

コーストラインに佇む、地中海風のリゾート。
魚貝が売り物らしい、イタリアンリストランテ。
D&Gが安く買えそうな、プレミアムアウトレット。
山と海に囲まれた、風光明媚で有名なスカイライン。

もしイタリアに住んでいたならば、自分が文化とのフリクションそのものなのだから、ブレラでそういう場所に行くのも楽しいことだろう。
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