すべての手応え足ごたえが正確で自然
最高出力280ps/最大トルク342Nmを発生するトヨタ製3.5リッターV6エンジンを搭載。組み合わされる6MTもトヨタ製が選ばれた。またオプションでスポーツレシオ6MT(28万円)も選択できる |
エリーゼに比べれば、随分と乗り込みやすく、運転もしやすい印象だ。ラグジュアリィな内装のおかげで、ストイックかつ硬派な雰囲気がまるでないのも、このクルマを多少なりとはフレンドリーに演出しているのだと思う。
全体的に触る場所が華奢である。これはエリーゼも同じ。昔のクルマはみんなそうだった。“機能/豪奢/過保護”というスポーツカーにとっての余分三兄弟によって、人が感知できるファン・トゥ・ドライブを大きく超えた重量となり、それを打ち消すためにモア・パワーを求めてきた現代のスーパースポーツ系にはない、20世紀型クルマ好きの古典派(今となっては超稀少??)にはちょっと嬉しい雰囲気でもある。
逆にいうと、昨今のスポーツカーに慣れた人の目には、いろんな意味でしょぼく映るかも知れない。特に、このクルマがなんだかんだで一千万円と聞いた日には……。それこそ、いっそ911でええやん、という話になりかねない。だから、ポルシェ911を筆頭に最近のスポーツカーとは比べたくないのだった。古典派のボクとしては。
そんな古典派を満足させるためには、ハンドルを握らせて50mも走れば十分である。華奢なハンドルにはクルマの動きが、振動も含めて例外なくリアルに伝わり、スポーツカーに乗っているという気分を盛り上げる。クルマとの一体感だって増してゆく。ファールを打ってしびれないバット、豪速球を受けて音もしない手もしびれないグローブなんて欲しくない!
ゆっくり走っているかぎり、どことなくバラバラだ。入れ替わり立ち代わり、いろんな音や振動がてんで勝手に主張する。古典派にとっては、それが期待となり予感となってさらにアクセルペダルを踏み込ませるのだが、逆にいうと、スポーツカーに乗って全てを楽しみ尽すというポジティブさがないフツウの人にとっては、いまどきこんなクルマがあったのか! となってしまうかもしれない。
速度が十分に上がれば、クルマが一転して履き慣れたジョグシューズ、もしくは着慣れたスイムスーツに早変わり。とにかく、すべての手応え足ごたえが、何がどうでこうとは言えないくらいに、正確で自然。だから、驚く間もなく楽しんでいる。知らないうちにニタニタしながら駆っている、そんな感じ。
不思議なことに、一度でも速度を上げてその一体感を味わったなら、再びタウンスピードに戻っても、前ほどバラバラした感じにならない。お互い身体もぬくもって、意思疎通と肉体伝播の経路もできあがり、動きも軽やかになったからだろうか。こんどは交差点をすっと曲がるときでも、ふふんと腰の切れを楽しむことができるのだった。
ロータスは、クルマでスポーツすることの意味をよく知っていて、そこに新たな解釈など必要がないと思っているのだろう。ちょうど野球やゴルフの楽しみ方が、プレーヤーにとって昔も今もほとんど変わっていないのと同じように。
乗降性に考慮しシル幅をエリーゼの100mmから80mmへ、シート高を65mm高くなっている。ドア開口部も全体的に縦に広げられた。レザーシートは標準採用。オプションでレザートリムやアクセントライトが備わるプレミアムパック(42万円)が用意されている |