「クルマ好きで良かったなあ」と思わせてくれるミト
レーシングスタイルの丸いテールランプにはLEDを採用。前後ランプのアクセントリングやドアミラーカバーには、クロームポリッシュ、ボディ同色、マットブラック、クロームサテン、チタニウムが用意される |
まず、スタイルがいい。8Cコンペティツィオーネ由来のルックス云々などという講釈を抜きにしても、スポーティさ/格好よさ/可愛さ/小粋さ/元気さ/若々しさ/ユニークさ、といったオトナのホットハッチに求められる要素がバランスよく盛り込まれている点がいい。どれかひとつでも飛び抜けた要素があると、それが鼻につくもの。たとえば同じ系列のアバルトモデルでは、スポーティさを演出するあまり、外観に子供っぽさが目立ってしまうのが玉に瑕だったり……。
モダンアルファロメオの魅力は、非凡なドライビングファンを持つ平凡なクルマであること、だ。そして、その非凡さを、やや抑え気味に、けれどもはっきりと表現するのがスタイリングの役目。そこが“格好よく”映る。ミトもその文法にきっちりと則って作られていた。
オーバーブースト機能によるトルクアップ(230Nmに増大)やステアリングアシスト量の減少などによるスポーティな走りのダイナミック(D)/ノーマル(N)/滑りやすい路面走行用のオールウェザー(A)、という3モードの走行パターンを選択できるD.N.A.システムを装備した |
もちろん、乗ると楽しい。いや、正確には、楽しもうと思えばいくらでも楽しめる、応えてくれる、と言った方がいいだろう。マニュアルミッションのみ(今のところ。近い将来、ダブルクラッチの2ペダルが発表されるはず)ということもあって、自然に“楽しむ”方向に振られるわけだが、まあ、普段乗りにおいて適当に運転しているかぎりは、乗り心地もいいし、ピーキーなところもそれほどないから、割と大人しく乗れてしまう。
ところが、こちらがクルマに対して心を開き「今日はなんでも受け止めて走るぞ」という気になった途端、実は“そらイケイケイケー!”とクルマが挑発していたことに気づく。あとは、挑発に気持ちよくノレばいいだけだ。もちろん、DNAモードはダイナミックに。ミトには今、流行りのモード別ドライブ制御システム(アルファではDNAと名付けた)がつく。これが走りの装備でのポイント。
手足がノセられたままに動きだすと、クルマは急でも緩でもなくあくまで人の感覚とズレないように走り、その結果、脳はさらに熱くなって手足を動かす。この一連のファン・トゥ・ドライブが、エンジンを止め、クルマを降り、カフェの席についてクルマをチラ見して一服するまで続く。息をついた(もしくは煙を吐いた)瞬間の幸せと言ったら……。
「クルマ好きで良かったなあ」。心からそう思える至福のとき。そういうことを、普段乗りにも使えるコンパクトハッチバックカーのスタイルで提供してくれるという、今となっては希有な存在。クルマ好き、運転好きのあらゆる段階の方にお奨めできる。これぞ、オトナのホッチハッチです。