圧倒的なパワーで豪勢な乗り味のSL600

SL600
フロントマスクが新しいデザインになった新型。大きなスリーポインテッドスターと水平バーをもつグリルが特徴的

早朝の薄曇り。サンタモニカビーチに面したパーキングにずらり並んだ新型SLクラスは、しかし思っていた以上にサマになっていた。半ば怖いもの見たさに似たような感覚でクルマに近づいたのだが、SLが以前よりワイド&ローにみえて格好いい。依然、キャデラックXLRのような雰囲気も漂っているが、迫力もある。初代SLのモチーフがそこかしこに散見されるのも、クルマ好きにはたまらない。グリルやフードバルジ、サイドエアベントが効いている。

初日はサンタモニカビーチを出発し、わざわざハリウッドを抜けて内陸の山間部に入り、そのままパームスプリングスを目指すというルートだった。途中でランチスポットがあり、その前後でクルマを入れ替える。この日、われわれに供されたのはSL350、SL550、SL600という所謂ノーマルラインナップ。

もう1台、SL280という廉価グレードが今回のマイチェンで追加されたが、日本への導入予定は今のところない。SL550とSL600のパワートレインはキャリーオーバー。

SL600
ヘッドレストには温風を送って首筋を暖めるエアスカーフを装備した

パールホワイトの外装色にレッドインテリアというド派手な、いかにもハリウッドに似合いそうなSL600でスタートした。

久しぶりのハリウッド。はっきりしていることは、ここでは自分がまるっきり異邦人であり、かすかに不安じみた寂しさを覚えてしまうということ。けれども、この街に似合うスーツ=SL600を着ていると、だんだん気が大きくなってくるのだから、トップ・オブ・SLクラスの威力は相当に頼もしい。

SL600
V12ツインターボエンジンを搭載するSL600は最高出力517psを誇る

相変わらず豪勢な乗り味だ。決してスポーツカーではない。どでかいクッションに身を任せたかのような(決してふわふわではないが)、意のままに動くクルーザーに乗っているかのような、そんな気分だ。

もちろん、ひとたびアクセルペダルを乱暴に踏み込めば、太いタイヤがすぐに悲鳴をあげてお尻が豪快に触れる。6LV12を2個のタービンでスーパーチャージしているのだから、そのパワフルさは伊達じゃない。ABCもさらに進化している。さすがに鼻先が重いが、だらしなく乱れるということがない。

圧倒的なパワー。5速ATで十分。

とはいえ、ここはアメリカ。速度違反に対する取り締まりは想像以上に厳しい。そんな自制心もあってか、秘めたパワーに挑発されることなく、ゆるゆるとオープンで流す。景色を仰ぎ見たりする。そういう乗り方がいかにも似合っている。

ロサンゼルスの街から半時間も走れば、もうそこは荒涼とした山岳地帯だ。空気は乾ききっており、岩と砂があたりを支配している。木々は葉を灰色がかった緑にしながら精一杯に生きている。ときおり現れる巨大なパランテーションと山火事の後。

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