パワーをテクノロジーで抑え込む、リアルスポーツ

SL63AMG
SL63AMGに搭載された6.2LのV8エンジンは最高出力525ps、SL65AMGの6LV12ツインターボでは最高出力612psとなる

まずはSL63AMGから。ようやくSLにも63ユニットが積まれた。6.2LV8自然吸気エンジンは、AMGメルセデス社が初めてブロックから自社で開発したエンジンである(これまではあくまでもメルセデスユニットの改造版であった)。フラットトルクで高回転型。スーパーチャージャー55ユニットほどの判り易い爆発力はないが、非常にマニアックなエンジンフィールをみせる。ボクは好きだ。

新型SL63にはもう1つ、ニュースがある。ついにメルセデスにも2ペダルロボタイズドミッションが積まれた。その名もAMGスピードシフトMCT(マルチクラッチテクノロジー)。名前をみて、ツインクラッチの類だと報じたニュースもあったが、実はシングルクラッチのシステム。

昨晩のプレゼンで説明された概要はこうだ。7Gトロニックのギアボックスをそのまま使い、トルコン部分に多板湿式クラッチをすえる。これを油圧で精密にコントロールすることで、トルコン並の扱いやすさと、クラッチ付きならではのダイレクトな変速を両立した。という言い分。

それができるなら皆な苦労しないよな、と半信半疑で乗り始めた。

驚く。4つある変速モード(C、S、S+、M)のうち、オートマチックのC(コンフォート)を選んでいるかぎり、不快なショックがほとんどない。シフトアップ時や微速域でもほとんど違和感がないのだ。その分、変速そのものはマイルド。

街を出て、パームスプリングスを見下ろす眺めの素晴らしいワインディングに入った。

ひとたびS(スポーツ)モード、もしくはS+モードを選べば、オートマチックでも相当にスポーティな走りが楽しめる。3段落ちのシフトダウンも可能。まるで猿の何やらで、むききと走りまくった。その一体感たるや尋常じゃない。これはもう、リアルスポーツカーの領域だ。ちなみにローンチコントロールも備わっている。

SL63AMG
新デザインのバンパー、ボンネットフード、サイドエアアウトレット、ボンネットフードなどを採用するAMGモデル

夕方には飛行機で、こんどはサンフランシスコに戻らなければならない。最後のクルマ、SL65AMGを試す。パワートレインはこれまでと同じ。ABCの制御など、マイナーな変更はされているはず。

63に負けてはならじ、とぶっ飛ばす。そういえば、ポリスの影がちらりとも見えない。こんなアメリカも初めて。さすがにオーバー600ps&1000Nmの迫力は、心臓が口から飛び出すんじゃないかと思うほどに爆発的なもの。容易には操れないパワーをテクノロジーで抑え込む。その技術力証明のために、このクルマが存在するかのようだ。

とにかく、すさまじい。それでいて、快適でもある。SLRマクラーレンじゃなくてもいいんじゃないか。もっともこれだって3千万円級だと言うが。
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