イギリス車、恐るべし
昨年の東京モーターショーで日本デビューを果たしたラグジュアリィな4シータークーペ、ベントレーブルックランズ |
この2月。第2週目にフィレンツェでベントレーブルックランズ、第3週目にはニース&モンテカルロでジャガーXFシリーズと、最新イギリス車の海外試乗会に立て続けに出席した。間に東京でアイアンメイデンのコンサートさえなければ、週末はイタリアで優雅に過ごす、なんて気取れたものを。
いずれも便利なエアフラ深夜便2泊4日で行ったり来たり。時差ボケになる暇がないというか、ダブルでボケるというか、いずれにせよ体は年々キツくなってゆく。もっとも、仮にイタリアで過ごせたとしても、このユーロ高じゃあ、コーヒー飲むたびに悲しくなってしまうのだが。
こちらも昨年の東京モーターショーで日本デビューを果たした、Sタイプの後継となるジャガーの新しいミドルクラスサルーン、ジャガーXF |
余談はさておき。今回のお題は“最新イギリス車”。結論から言うと『ブリテッシュ・ブランドは凄い!』である。
こんなことをいうと、クルマ事情を良く知る人ほど、首をかしげるかも知れない。曰く、「何言うてんのん、どいつもこいつも身売りされたとこばっかしやん」。曰く、「イギリスにはもう1つも民族資本ないねんで」。また曰く、「イギリス車ってマトモなイメージないもんな」。などなど。
だから、見るべきものはないんじゃないか……。大間違いである。
外国資本でも問題ない
確かにイギリスのブランドは今やほぼ全て外国資本によって支えてられている。VW(ベントレー)、BMW(ロールスロイス、ミニ)、フォード(ジャガー、ランドローバー、インド・TATAに売却か?)、プロトン(ロータス)。フォード傘下にあったアストンマーティンはプロドライブの英国人デビット・リチャーズに売却されたが、それにしたって中東の金融&オイルマネーがメインだ。要するに全て余所に買われてしまった。そして、そのまま裏がえせば、欲しいと手を挙げたところがあった。そこが、ミソだ。
結果、今、名だたるブランドたちの製品商品はどうなっているのか。よく見て欲しい。アイデンティティを失ってしまったブランドはあるか?不出来なクルマを造っているブランドはあるか?
ない。ぜんぜん、ない。
ファントムもアルナージも、XKもレンジもミニもエリーゼも、そしてAMV8も、みんなみんな“良くできた”クルマたちだ。ここで言う良くできたクルマとは、単に工業製品として“マトモ”というだけの意味ではない。背負ったブランドの価値を現代的にちゃんと表現し、移動の手段+αとしてエクストラコストを支払う価値のあるクルマを造っている、という意味も含まれている。
それって、実に素晴らしいことじゃないか!本物の文化性を有していれば、たとえ資本が外国からやってこようと崩れることがない。主張があって、尊敬も受ける。だから逆にグローバルにも立派に通用する。ただし、商品として成功するかどうかは、時代の流れや親会社の戦略などによって左右される。今のところ、ジャガーとランドローバーは苦しいけれども、次の親玉はどうやら相当に太っ腹(金は出すが口は出さない、たぶん出せない)のようだ。大いに期待できよう。
さて、本題。今回乗った2台で、私は“イギリス車、恐るべし”の想いを強くした。肥沃なジドウシャの大地をイギリスで見渡したい気分になった。趣味のクルマはイギリス車でキマリ(ちなみに大衆車はフランスかイタリアで。移動の手段ならドイツ車で。何も考えたくないなら日本車で)かもしれないし、マジでイギリス車党に鞍替えしようかとさえ思った(私は一応、イタリア車党)。
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