昨年暮れにフィリピンにあるホンダのマニュアルトランスミッション(MT)工場を見学しました。一部は日記でも速報しましたが、改めて詳しいレポートを上げておきたいと思います。

MT工場が設けられたのはホンダ・パーツ・マニュファクチュアリング(HPMC)の工場内です。マニラ近郊のラグーナ・テクノパーク内に立地するこの工場では、従来からプレス部品を中心にした補修部品を生産してきましたが、それに加えてMT工場が設けられました。

ホンダは世界市場をターゲットにしたクルマ作りを進めるため、メイド・バイ・グローバル・ホンダのコンセプトのもとに、フレキシブルな生産体制の構築を実践しています。この考え方に基づきASEAN地域では自由貿易協定を活用した生産の分担を図っています。主要な組み立て工場はタイに設けられていますが、AT工場をインドネシアに、MT工場をフィリピンに設けて、域内の相互供給を図る考えです。フィリピンやインドネシアにも組み立て工場を持っていますが、いずれも規模は小さなものです。

MT工場は本来ならAT工場と一緒に作ったほうが効率的といえます。MTとATの需要変動があった場合でも、生産比率を変えるだけでトータルの生産台数を落とさずにすむからです。ただ、MT工場をインドネシアのAT工場に併設すると、フィリピンから輸出するものがほとんどなくなり、貿易のアンバランスが生じて東南アジアの自由貿易協定を生かすことができなくなります。そのためもあってフィリピンのHPMCがMT工場の設置場所として選ばれました。

HPMC自体も、補修部品の工場であるために多品種少量生産を強いられる宿命にあり、効率的な生産を実現できるMT工場の設置は大いに望むところだったのです。現在の時点では、ASEAN域内のタイやインドネシアへの供給より、英国ホンダやアメリカホンダへの供給のほうが多い状況ですが、将来的にASEAN域内に供給する量が増えていくものと見られています。

生産しているMTはシティ用、シビック用、アコード&CR-V用の3機種で、排気量1200ccから2400ccまでのエンジンに対応するMTを生産しています。トランスミッションの外側のケース部分はアルミ製で、これを作るためのダイキャスト・マシーンは東南アジアでも最大の機械を設置しています。大キャスト・マシーンへの投資は相当に大きなものであるため、自社で持たなくてもという声も強かったそうですが、生産の効率化を考えると自社で持つのが理想とのことで、あえて自社工場内に設けたそうです。ダイキャストで作られたアルミ鋳造ケースのマシニング加工は日本から遊休機を持ち込むなどして、シンプルかつ低コストの工場を造っています。

組み立てラインには女性の姿も目立ち、合計14名の人員で最終組み立てに当たっています。このラインもいろいろな工夫が凝らされていて、部品の取り付け漏れが発生しないようにしたり、あるいは部品を入れたケースが傾斜を利用してラインの先頭に戻るようにするなど、コストをかけずに品質を確保する工夫を凝らしています。品質の管理や完成品に対する品質のチェックなども入念に行われていて、品質的には日本製のものと変わらないレベルにまで達しているということでした。

日本国内ではMT車の設定のないホンダ車が多くなっていますが、世界的にはまだまだMT車の需要は根強いものがあります。当分はフィリピンのMT工場が、世界への供給基地になります。ただし、全体的な流れとしては東南アジアなどでもAT比率が上昇する傾向にあるため、HPMCのMT生産も長期的には見直さなければならなく可能性があります。

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