ダイハツの新型車タントは「しあわせ家族空間」をコンセプトに開発されたクルマです。軽自動車以外の登録車でミニバンが良く売れているのに対応し、軽自動車規格の範囲内で家族が楽しめるミニバン感覚のクルマを作ろうとしたのがタントです。軽自動車であるために2列シートで乗車定員も4人乗りにとどまりますが、広々とした室内空間はほかにはないものです。ムーヴともアトレーとも違う新しいパッケージングの軽自動車がまたひとつ生まれてきました。
タントには自然吸気エンジンを搭載したグレードが3グレード、ターボ仕様のエンジンを搭載したグレードが2グレードあり、それぞれFFと4WDが設定されていますから、全部で10グレードのバリエーション構成となります。
2WD
自然吸気 L 99.8万円
自然吸気 X 113.0万円
自然吸気 Xリミテッド 119.8万円
ターボ R 123.0万円
ターボ RS 135.0万円
4WD
自然吸気 L 108.8万円
自然吸気 X 122.0万円
自然吸気 Xリミテッド 128.8万円
ターボ R 134.0万円
ターボ RS 146.0万円
まず最初にFFと4WDの価格差ですが、基本的には11万円です。ターボが11万円で、自然吸気では4WDがFFの9万円高にとどまっているのは、自然吸気の4WDはATが4速ではなく3速になるためです。自然吸気のFF車とターボ車全部は4速ATですから、自然吸気の4WDだけがちょっと仕様がダウンしています。FFと4WDのどちらを選ぶかは、雪道を走る機会の多さによって決めたら良いでしょう。軽自動車の4WDは小さめの価格差で手に入りますが、価格の高さのほか、重さやフリクションロスによる燃費の悪さも関係しますから、温暖な地区のユーザーが積極的に4WDを選ぶ状況にはありません。タントでは自然吸気エンジンのFF車だけがグリーン税制の適合を受けていますが、ターボ車と4WD車は税制上の優遇措置が受けられませんから、ますます4WDを選ぶのが不利になります。
次に自然吸気かターボかの選択ですが、XとRで比べてもターボ車は10万円も高くなります。これは単純な比較で装備も含めて考えると少し違うのですが、取り敢えず10万円余分に出さないとターボ車を手に入れることはできません。タントはムーヴに比べて背の高いクルマに仕上げられていますから、その分だけ重量が重くなっています。自然吸気ではなくターボによるトルクの余裕が欲しいと感じられるシーンが多いかも知れません。でも、家族で使うタントはスポーティな走りを追求するクルマではありませんから、自然吸気エンジンを搭載したモデルで十分でしょう。
これで自然吸気エンジンのFF車を選ぶことが決まったワケですが、まだ3グレードが設定されています。このうち最上級グレードのXリミテッドはエアロパーツなどを装着することで価格が高くなっているグレードですから、これは外して考えたらいいでしょう。120万円近い価格を考えてもXリミテッドを選ぶ意味は薄いと思います。
ベースグレードのLは99.8万円で、Xは113.0万円ですから、この2グレードの間には13.2万円の価格差があります。この価格差が何によって生じているかといえば、最も大きいと思われるのがXが14インチタイヤ+アルミホイールなのに対してLは13インチタイヤ+フルホイールキャップになること。差額として考えても数万円の違いになります。さらにLではオプションのABSを装着するとこれが3万円。エアコンのオート機能は2万~3万円分、ドアミラーの電動格納機構は1万~2万円といったところでしょうか。ほかに後席ユースフルトレーの有無があって13.2万円の価格差は、まずは納得できるものです。
Lを選ぶと、ABSはオプション装着が可能なものの、エアコンのオート機能とドアミラーの電動格納機構は選択できなくなります。これがガマンできるかどうかがポイントにはなるものの、たいていのユーザーにとってはLで十分だと思います。タントの室内空間が100万円を切る価格で手に入るLは相当に魅力的なグレードといえます。
ちなみにタントのLはムーヴのLに対して5万円高くなっています。これは室内空間の広さ異なるほか、ムーヴのLにはない後席のロングスライドがタントのLには装備されていることなどの違いがあります。広さを追求するなら断然タントのほうがお勧めでしょう。タントが売れることでムーヴの売れ行きが伸び悩むことになりますが、トータルで台数が増えれば良いということでしょう。